「セクキャバは風営法上どのような位置づけになっている?」
「セクキャバを開業するための手続きを知りたい」
「セクキャバで風営法違反にならないようにするにはどうすればいい?」
セクキャバとは、正式名称を「セクシーキャバクラ」といい、通常のキャバクラに性的なサービスが加わった風俗店の一種である。性的なサービスという点では、「性風俗関連特殊営業」にあたるようにも思えるが、実は風営法上は、一般的なキャバクラと同様に「風俗営業」に該当するため、風俗営業の1号営業許可を取得することで営業することが可能である。
ただし、風俗営業の許可を取得したとしても過剰な性的サービスを提供すると風営法施行条例違反や公然わいせつ罪などで検挙されるリスクもあるため注意が必要である。
本記事では、
・セクキャバの風営法上の位置づけ
・セクキャバの開業に必要な許可条件や許可申請の手続き
・セクキャバで風営法違反にならないようにするためのポイント
などについて詳しく解説する。
セクキャバの営業で風営法違反のリスクを最小限に抑えるには、風営法に詳しい弁護士のサポートが不可欠となるため、少しでも不安があるときはすぐに弁護士に相談してほしい。
セクキャバとは、正式名称を「セクシーキャバクラ」といい、通常のキャバクラが行う接客・会話・お酒の提供といったサービスに加えて、キスや胸への接触などの性的なサービスが加わった風俗店の一種である。
このような性的なサービスという点に着目すれば、キャバクラのような「風俗営業」ではなく、ソープのような「性風俗関連特殊営業」に該当するようにも思える。しかし、地裁の判例では、「客の接待をする行為には、性交や性交類似の行為を含むと解されている」として、風俗営業の「接待」には性的なサービスも含まれると判断しているものがある(山口地裁平成8年10月11日判決)。
このような判例の考えを前提にするとセクキャバの性的なサービスは、「接待」に含まれるため一般的なキャバクラと同様に風俗営業の1号営業許可を取得することで適法に営業することが可能になる。
ただし、都道府県が制定する風営法施行条例では「卑わいな行為」などが禁止されているため、セクキャバの営業内容によっては風営法施行条例違反になる可能性がある点に注意が必要である。
(風俗営業者の遵守事項)
第七条 風俗営業者は、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
一 営業所で卑わいな行為その他善良の風俗を害する行為をし、又はさせないこと。
(引用:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例)
風俗営業(1号営業)の許可を取得してセクキャバを開業するには、以下の要件を満たす必要がある。
以下のいずれかの条件に該当する人は、風俗営業の許可を受けることはできない。
①破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
②1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は一定の罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
③集団的に、又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者
④アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
⑤精神機能の障害により風俗営業の業務を適正に実施するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
⑥風俗営業の許可を取り消されて5年を経過しない者
⑦風俗営業の取消処分に係る聴聞の期日等の公示日から取消し等の決定をする日までの間に、許可証を返納した者で、当該返納の日から起算して5年を経過しないもの
⑧⑦の規定する期間内に合併により消滅した法人又は許可証を返納した法人
⑨⑦の規定する期間内に分割により、聴聞に係る風俗営業を継承させ、若しくは分割により、当該風俗営業以外の風俗営業を継承した法人
⑩営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者
⑪法人の役員、法定代理人が上記①から⑤までに掲げる事項に該当するとき
なお、2025年3月7日に風営法の改正案が閣議決定され、風俗営業の欠格事由の範囲が拡大し、以下の欠格事由が追加されることになった。
・親会社等が許可を取り消された法人
・警察による立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者
・暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者
これによりホストクラブのグループ店舗も欠格事由に該当し、グループ会社や関連会社の許可が取り消される可能性がある点に注意が必要である。
以下のいずれかの地域に該当する場所では、風俗営業の許可を受けることはできない。
・第1種低層住居専用地域
・第2種低層住居専用地域
・第1種中高層住居専用地域
・第2種中高層住居専用地域
・第1種住居地域
・第2種住居地域
・田園住居地域
・準住居地域
ただし、これらの地域に該当しない場所であっても、お店の場所から半径100m以内に「保護対象施設」(学校、図書館、児童福祉施設、病院、診療所)がある場合、その場所では風俗営業の許可は受けられない。
風俗営業の許可を受けるには、構造・設備に関して営業区分に応じた以下の要件を満たす必要がある。
・客室の床面積が1室16.5㎡以上(和室の場合は1室9.5㎡以上)とすること
・客室の内部が店の外部から容易に見通すことができないこと
・客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと
・善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと
・客室の出入口に施錠の設備を設けないこと
・店舗内の照度(明るさ)が5ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
・騒音又は振動の数値が条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
・ダンスをするための構造又は設備を有しないこと
風営法の1号営業許可を取得してセクキャバを開業する際の手順は、以下のとおりである。
セクキャバを開業するなら所轄の警察署での事前相談をするべきである。
警察署で事前相談をすることで、セクキャバの開業に必要になる手続きや書類などについてアドバイスしてもらえるため、スムーズに許可申請の手続きを進めることが可能となる。
風営法の1号営業許可を取得してセクキャバを開業するには、以下の申請書類を作成・準備しなければならない。
①許可申請書
②営業の方法を記載した書類
③営業所の使用について権原を有することを疎明する書類
④営業所の平面図及び営業所の周囲の略図
⑤住民票の写し
⑥人的欠格事由に該当しない旨の誓約書
⑦市町村の発行する身分証明書
⑧法人の場合は、定款・法人に係る登記事項証明書及び役員に係る上記⑤から⑦までの書面
⑨管理者を選任する場合は、選任する管理者の誓約書、上記⑤から⑦までの書面
⑩管理者の写真2枚
申請書類の作成・準備ができたら営業所を管轄する警察署に申請書類を提出する。
なお、風俗営業の許可申請にあたっては、申請手数料として2万4000円の支払いが必要である。
風俗営業の許可申請が受理されると、実際に開業予定の店舗に警察官等が出向いて検査が行われる。このような立ち入り検査のことを「実査」と呼ぶ。
実査では、主に以下のような事項が確認されます。
・図面との一致
・客室の構造
・照明
・防音対策
・18歳未満立ち入り禁止の掲示の有無
・従業員名簿の備付の有無
実査に合格しなければ風俗営業許可は下りないため、事前に構造基準を完全に満たす形に仕上げておかなければならない。
審査の結果、問題なければ許可証が交付され、セクキャバの営業が可能になる。
無事にセクキャバを開業できたとしてもセクキャバの営業で風営法違反になってしまうと営業停止や許可取り消しといった行政処分や刑事処分を受けるリスクがある。そのため、セクキャバの営業にあたっては、以下の点に注意が必要である。
セクキャバを営業するには、風営法の風俗営業許可(1号営業許可)が必要である。
風俗営業の許可を得ることなくセクキャバを営業すると無許可営業となり、厳しい処分を受ける可能性がある。特に、今後風営法改正により無許可営業が厳罰化される予定であるため、無許可営業にならないよう注意が必要である。
セクキャバは、風俗営業に該当するため午前0時から午前6時までの深夜営業が禁止されている。
客からの需要があるからといって隠れて深夜営業をしていると、ライバル店や客からの通報により風営法違反が発覚する可能性が高いため注意が必要である。
セクキャバでは、18歳未満の未成年者を働かせることができない。
従業員を雇う際には、必ず顔写真付きの身分証明書により年齢確認を行うことが大切である。しっかりと年齢確認をせずに未成年者を雇った場合、「未成年だとは知らなかった」との言い訳は通用しないため注意が必要である。
風営法では、以下のような客引き行為を禁止している。
・相手を特定して店の客として来るように勧誘する行為
・勧誘のために相手の進路に立ちふさがる行為
・勧誘のために相手につきまとう行為
ただし、不特定多数への呼びかけは風営法が規制する客引きには該当しないため、不特定多数の通行人に声をかけ、積極的に店に誘うことは可能である。
今後予定されている風営法改正では、無許可営業・名義貸し・メンズエステ禁止区域営業の違反行為に対する罰則が厳罰化される予定である。
具体的には、以下のように違反行為の法定刑が引き上げられる予定となっている。
区分 | 改正前風営法 | 改正風営法 |
---|---|---|
個人に対する罰則 | 2年以下の懲役または200万円以下の罰金、または併科 | 5年以下の懲役または1000万円以下の罰金、または併科 |
法人に対する罰則 | 200万円以下の罰金 | 3億円以下の罰金 |
特に、無許可営業等の違反行為をした法人に対しては、最大で3億円の罰金が科される可能性もあるため、セクキャバを営業する際には風俗営業許可を取得してから行うべきである。
なお、セクキャバが無許可営業の疑いで摘発された事例としては、以下のようなものがある。
公安委員会から許可を受けずに「セクシーキャバクラ」と呼ばれる業態の風俗店を営業したとして、愛知、三重両県警は、風営法違反(無許可営業)の疑いで、名古屋市と三重県四日市市で計4店舗を摘発、経営者ら計8人を逮捕した。名古屋市の繁華街を拠点とするグループが三重県にも進出していたとみて実態を調べている。
逮捕されたのは、いずれも風俗店経営の容疑者(42)ら。両県警は認否を明らかにしていない。
逮捕容疑は、いずれも無許可で、店内の照明を暗くして5平方メートル以下の客席を設け、飲食する形態の風俗店を営業したとしている。
愛知県警によると、各客席でバスローブなどを着た女性従業員がみだらなサービスを提供していた。県警は、売り上げが暴力団の資金源になっていたとみている。
(引用:産経新聞)
セクキャバは、風俗営業許可(1号営業)を取得することで適法に営業することが可能になるが、実際の営業では風営法違反にならないように注意が必要である。また、セクキャバで提供する性的なサービスの内容によっては、風営法施行条例違反や公然わいせつ罪に問われるリスクもあるため、健全なセクキャバ経営を行うには、このような違反行為のリスクを最小限に抑えることが重要である。それには、風営法に強い弁護士によるサポートが不可欠であるため、まずはグラディアトル法律事務所まで相談してもらいたい。
グラディアトル法律事務所は、東京と大阪の2拠点を中心に活動しており、ナイトビジネス業界で全国1000件以上の解決実績がある。風営法違反に関する刑事弁護の経験も豊富である。
また、グラディアトル法律事務所では、500店舗以上の風俗店の顧問弁護士を担当しており、ナイトビジネス業界に特化した弁護士事務所といえるだろう。トラブル対応だけではなくトラブル予防にも力をいれているため、実際にトラブルが生じていなくても気軽に相談してもらいたい。
セクキャバは、性的なサービスを提供するものの「性風俗関連特殊営業」ではなく「風俗営業」の許可を取得することで営業することが可能である。
ただし、セクキャバの営業にあたっては風営法違反にならないようにするために注意すべきポイントが多数あるため、健全なセクキャバ経営を行うためにも、まずはグラディアトル法律事務所まで相談してもらいたい。