「マッスルバーの開業にあたって風営法上の許可は必要?」
「マッスルバーの風営法上の位置づけはどうなっている?」
「マッスルバーで風営法違反になりやすいケースとは?」
マッスルバーとは、筋骨隆々な男性スタッフが自慢の筋肉を用いて接客やパフォーマンスを提供するバーのことをいう。マッチョ好きの女性をターゲットにしたコンセプトバーであり、店舗によって個性豊かなサービスを提供している。
このようなマッスルバーは、どのようなサービスを提供するかに応じて、風営法上、以下のような手続きが必要になる。
・マッスルバーで深夜営業をする場合→深夜酒類提供飲食店営業の届出
・マッスルバーで接待をする場合→風俗営業(1号営業)の許可
・マッスルバーで深夜営業+遊興をする場合→特定遊興飲食店営業の許可
適切な許可・届出を行わなければ、無許可営業として重い処罰を受ける可能性があるため注意が必要である。
本記事では、
・マッスルバーの開業に必要な風営法上の手続き
・マッスルバーにおける「接待」および「遊興」の意味
・マッスルバーが風営法違反になりやすい3つのケース
などについて詳しく解説する。
マッスルバーでは、上半身裸の男性スタッフが女性客にサービスを提供するという性質上、風営法上の「接待」が問題になるケースが多く、無許可営業で摘発されるリスクがある。風営法を遵守してマッスルバーの営業を行うには専門家である弁護士のアドバイスやサポートが費用になるため、まずは弁護士に相談することをおすすめする。
マッスルバーを開業する際には、風営法上の許可または届出が必要である。もっとも、具体的な営業形態に応じて必要になる風営法上の手続きが異なるため、以下では、3つのパターンごとの風営法上の手続きを説明する。
マッスルバーでは、主にお酒を提供することになるため午前0時以降の深夜営業するには、深夜酒類飲食店営業の届出が必要である。
ただし、深夜酒類飲食店営業の届出をしてマッスルバーを営業する場合、後述するような「接待」や「遊興」をすることができないため、客に提供するサービスの幅が狭くなる点に注意が必要である。
マッスルバーでは、女性客が男性スタッフの筋肉にタッチするなどのサービスを提供している店が多いが、そのようなサービスは風営法では「接待」に該当するため、風俗営業(1号営業)の許可が必要になる。
ただし、風俗営業(1号営業)の許可を得てマッスルバーの営業をする場合、午前0時以降の深夜営業が禁止される点に注意が必要である。すなわち、深夜酒類飲食店営業の届出と風俗営業の許可は両立しないということである。
マッスルバーにおいて男性スタッフによるショーやパフォーマンスを行う場合、風営法の「遊興」に該当するため、特定遊興飲食店営業の許可が必要になる。
特定遊興飲食店営業の許可を得てマッスルバーを営業する場合、風俗営業許可とは異なり、深夜0時以降の営業も可能となる。ただし、女性客とのボディタッチは禁止されるため、どのような形態でマッスルバーを営業するかは、開業前に明確にしておくことが重要である。
マッスルバーで男性スタッフが女性客に「接待」をする場合、風俗営業(1号営業)許可が必要となる。以下では、風営法上の「接待」の定義とマッスルバーで接待にあたり得る具体的な行為を説明する。
風営法上の「接待」とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義されている。
この定義だけではわかりにくいが風営法解釈運用基準では、「接待」に関して、以下の基準が示されている。
・客が飲食以外のサービス(会話や疑似恋愛)を期待して来店すること
・特定の客やグループ客に対する会話やサービスが提供されること
・キャストが積極的に会話やサービスを提供すること
マッスルバーで接待にあたり得る具体的な行為としては、以下のようなものが挙げられる。
・ボディタッチ
・2ショットでのチェキ撮影
・特定の客とダンス
・カラオケでデュエット
・客の口元に飲食物を差し出す
マッスルバーで男性スタッフによるショーやパフォーマンスする場合、特定遊興飲食店営業の許可が必要となる。以下では、風営法上の「遊興」の定義とマッスルバーで遊興にあたり得る具体的な行為を説明する。
風営法上の「遊興」とは、「営業者側の積極的な働きかけによって客に遊び興じさせること」と定義されている。
具体的には、以下のような行為が「遊興」にあたると考えられている。
・不特定の客にショーやダンスなどを見せる
・不特定の客に歌手が歌ったり、バンドが生演奏をする
・ダンスができる設備を設けて不特定多数の客にダンスをさせる
・スポーツなどの映像を流して、不特定の客に見せ応援させる
特定遊興飲食店営業の「遊興」は、不特定の客に対して働きかけを行うものであり、特定の客に対して働きかけをすると風俗営業の「接待」になる点に注意が必要である。
マッスルバーで遊興にあたり得る具体的な行為としては、以下のようなものが挙げられる。
・不特定の客にショーやダンスを見せる
・不特定の客に歌を披露する
・不特定の客にカラオケで歌わせて、音楽や照明の演出を行う
・不特定の客にダンスをさせる
なお、ショーの途中で男性スタッフが女性客に近寄って、筋肉を触らせるような行為をすると「接待」にあたるため、特定遊興飲食店営業の許可では風営法違反になる。
マッスルバーが風営法違反になりやすいケースとしては、主に以下の3つが挙げられる。
マッスルバーでは、女性客が男性スタッフの筋肉を触るなどのボディタッチをサービス内容に含んでいる店舗が多い。女性客としても男性スタッフの筋肉目当てに来店しているため、女性客からの要望があれば触らせたくなるという気持ちも十分に理解できるところである。
もちろん風俗営業(1号営業)許可を取得してマッスルバーを営業しているのであれば何の問題もないが、深夜酒類飲食店営業の届出や特定遊興飲食店営業の許可では、ボディタッチなどの接待をすることはできない。
風俗営業許可を取得することなく接待をすると、無許可営業として厳しい処分を受ける可能性がある。
風俗営業許可を取得したマッスルバーであれば女性客が男性スタッフの筋肉に触るなどのボディタッチができるようになるが、風俗営業として営業時間の制限が生じるため、深夜営業ができなくなる
隠れて深夜営業していても同業者や客からの通報により発覚するケースが多いため、営業時間の制限を守って営業しなければならない。
風俗営業の許可を取得して営業するマッスルバーでは、風営法により客引き行為が禁止されている。また、深夜酒類飲食店営業の届出および特定遊興飲食営業の許可により営業するマッスルバーでは、深夜時間帯の客引き行為が禁止されている。
客の入りが少ないときは従業員に命じて客引きをさせている店もあるようだが、このような客引き行為は風営法に違反する行為である。
マッスルバーは、営業形態に応じて必要となる許可や届出の手続きが異なっている。どの手続きを行うのかによって、営業時間や接待の可否などが変わってくるため、開業前に十分に検討してから手続きをするべきである。
もっとも、風営法上の規制やルールについては、一般の方では正確に理解することが困難であるため、風営法の規制やルールで少しでもわからないところがあるときは、専門家である弁護士に相談した方が安心である。自己判断で誤った対応をしてしまうと風営法違反で厳しい処分を受ける可能性があることから、早めに風営法に詳しい弁護士に相談した方がよいだろう。
グラディアトル法律事務所は、東京と大阪の2拠点を中心に活動しており、ナイトビジネス業界で全国1000件以上の解決実績がある。風営法違反に関する刑事弁護の経験も豊富である。
また、グラディアトル法律事務所では、500店舗以上の風俗店の顧問弁護士を担当しており、ナイトビジネス業界に特化した弁護士事務所といえるだろう。トラブル対応だけではなくトラブル予防にも力をいれているため、実際にトラブルが生じていなくても気軽に相談してもらいたい。
マッスルバーを開業する際には、風営法上の許可や届出に関して考慮すべき点が多く存在する。また、マッスルバーを開業後も営業方法によっては風営法違反になる可能性があるため、注意して営業していかなければならない。
風営法を遵守したマッスルバー経営を行うには、専門家である弁護士のアドバイスやサポートが必要になるため、まずはグラディアトル法律事務所まで相談してもらいたい。