「パチンコ店には風営法上どのような規制がある?」
「パチンコ店を開業するために必要な風営法上の許可を知りたい」
「パチンコ店を開業する際の手順はどうなっている?」
パチンコ店は、風営法上の風俗営業(4号営業)に該当するため、パチンコ店を開業するには4号営業許可が必要になる。また、パチンコ店は、著しく客の射幸心をそそるおそれがあり、ギャンブル依存症のリスクが高いことから、遊技設備や遊技方法について厳しい規制がなされている。そのため、無事に4号営業許可を取得できたとしても営業にあたっても風営法上さまざまな規制があるため、風営法違反にならないように注意が必要である。
本記事では、
・パチンコ店が風営法の4号営業許可を得るための許可条件
・パチンコ店が風営法の4号営業許可を得る手順
・パチンコ店が開業した後に遵守すべき風営法の規制
などについて詳しく解説する。
パチンコ店の営業にあたって風営法上の疑問や悩みが生じたときは、自己判断で解決するのは危険であるため、まずは風営法に詳しい弁護士に相談することをおすすめする。
パチンコ店は、風営法の風俗営業に該当するため、パチンコ店を開業するには風俗営業(4号営業)の許可が必要である。
風営法では客に飲食や遊興をさせて接待する営業または射幸心をそそる遊戯をさせる営業を「風俗営業」と呼び、風俗営業を「接待飲食等営業」と「遊技場営業」の2種類に分けている。また、「遊技場営業」は、さらに4号営業と5号営業に分けられており、パチンコ店は、「マージャン、ぱちんこその他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」として4号営業に該当する。
パチンコは、偶然の勝ち負けによる興奮をあおる娯楽であり、依存所やトラブルの温床になりやすい側面がある。また、ギャンブルに類似した遊技であるため反社会的勢力の資金源になる可能性もあることから、風営法により厳しい規制がなされているのが現状である。
パチンコ店の開業・営業を検討中の方は、風営法上の規制を正確に理解し、風営法違反にならないようにしていかなければならない。
以下のいずれかの条件に該当する人は、風俗営業の許可を受けることはできない。
①破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
②1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は一定の罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
③集団的に、又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者
④アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
⑤精神機能の障害により風俗営業の業務を適正に実施するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
⑥風俗営業の許可を取り消されて5年を経過しない者
⑦風俗営業の取消処分に係る聴聞の期日等の公示日から取消し等の決定をする日までの間に、許可証を返納した者で、当該返納の日から起算して5年を経過しないもの
⑧⑦の規定する期間内に合併により消滅した法人又は許可証を返納した法人
⑨⑦の規定する期間内に分割により、聴聞に係る風俗営業を継承させ、若しくは分割により、当該風俗営業以外の風俗営業を継承した法人
⑩営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者
⑪法人の役員、法定代理人が上記①から⑤までに掲げる事項に該当するとき
なお、2025年3月7日に風営法の改正案が閣議決定され、風俗営業の欠格事由の範囲が拡大し、以下の欠格事由が追加されることになった。
・親会社等が許可を取り消された法人
・警察による立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者
・暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者
これによりホストクラブのグループ店舗も欠格事由に該当し、グループ会社や関連会社の許可が取り消される可能性がある点に注意が必要である。
以下のいずれかの地域に該当する場所(要は住宅で静かに暮らすエリアや子どもを守りたい場所)では、風俗営業の許可を受けることはできない。
・第1種低層住居専用地域
・第2種低層住居専用地域
・第1種中高層住居専用地域
・第2種中高層住居専用地域
・第1種住居地域
・第2種住居地域
・田園住居地域
・準住居地域
ただし、これらの地域に該当しない場所であっても、お店の場所から半径100m以内に「保護対象施設」(学校、図書館、児童福祉施設、病院、診療所)がある場合、その場所では風俗営業の許可は受けられない。
風営法の4号営業許可を受けるには、構造・設備に関して営業区分に応じた以下の要件を満たす必要がある。
・客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと
・善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと
・客室の出入口に施錠の設備を設けないこと
・店舗内の照度(明るさ)が10ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
・騒音又は振動の数値が条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
・パチンコ屋では営業で使用する遊技機以外の遊戯設備を設けないこと
・パチンコ屋では店内の客の見やすい場所に商品を提供する設備を設けること
パチンコ店に設置する遊技機は、著しく客の射幸心をそそるおそれがないものでなければならないため、厳格な基準と認定制度が設けられている。これは、過度に射幸心をあおる機械や不正改造された台の流通を防ぎ、公正な遊技環境を保つことを目的としている。
具体的な遊技機基準は、非常に細かいためすべてを示すことはできないが、主な検査項目としては、以下のようなものが挙げられる。
・大当たり確率の確認
・出玉性能
・確率変動や時短の発生頻度、条件
・演出の作動確認
・改造防止構造の確認
以下では、パチンコ店が風営法の4号営業許可を取得する手順について説明する。
パチンコ店の開業を検討している場合、まずは所轄の警察署で事前相談を行うべきである。
なぜなら、事前相談をすることでパチンコ店開業に必要となる書類や手続きについて案内してもらえるため、スムーズに許可申請の手続きを進めることができるようになるからである。
パチンコ店が風営法の4号営業許可を得るには、以下の申請書類を作成・準備しなければならない。
①許可申請書
②営業の方法を記載した書類
③営業所の使用について権原を有することを疎明する書類
④営業所の平面図及び営業所の周囲の略図
⑤住民票の写し
⑥人的欠格事由に該当しない旨の誓約書
⑦市町村の発行する身分証明書
⑧法人の場合は、定款・法人に係る登記事項証明書及び役員に係る上記⑤から⑦までの書面
⑨管理者を選任する場合は、選任する管理者の誓約書、上記⑤から⑦までの書面
⑩管理者の写真2枚
⑪ぱちんこ店の場合は、遊技機に係る検定通知書の写し及び保証書等
申請書類の準備が整ったら、営業予定地を管轄する警察署に申請書類を提出する。
申請書類に不備がなければ許可申請が受理され、審査がスタートする
4号営業の審査としては、現地調査、書類確認、管理者の面接などが行われる。
主な審査内容には以下のようなものがある。
・立地が基準を満たしているか
・店舗構造が適用化
・経営者、役員が「欠格事由」に該当しないか
・営業の方法が適切か
審査の結果、問題がなければ4号営業許可が出て、許可証が発行される。
無事許可が下りればその時点からパチンコ店の営業を開始することができる。
項目 | 内容 |
---|---|
遊技料金の規制 | 貸玉4円/個、貸メダル20円/枚まで。1円パチンコや10円スロットも可。 |
営業時間の規制 | 深夜0時〜6時は営業禁止。東京都では10時〜23時が上限。 |
遊技機入替の規制 | 入替や性能に影響する部品交換には変更承認が必要。「くぎ曲げ」は無承認設備変更で違法。 |
広告宣伝の規制 | 「大当たり連発」等の射幸心煽動、イベント告知、特定機種推奨、LINEでのくぎ告知などは禁止。 |
賞品提供の規制 | 賞品は物品に限り、現金や金券は禁止。自店で提供し、価格は9600円以下。バランスよく陳列し、三店方式を除き現金買取は禁止。 |
パチンコ店は開業後も風営法のルールを遵守して営業していかなければならない。以下では、パチンコ店が開業後に遵守すべき風営法の規制について説明する。
パチンコ店は、客に玉やメダルを貸すことで利益を得ているが、貸玉および貸メダルの料金(遊技料金)には、以下のような上限が設けられている。
・貸玉料金……玉1個につき4円
・貸メダル……メダル1枚につき20円
上記金額以下であれば問題ないため、1円パチンコや10円スロットという遊技料金の設定でも問題はない。
パチンコ店は、風俗営業であるため風営法により午前0時から6時までの深夜営業が禁止されている。
また、各都道府県の条例では風営法に上乗せした営業時間の規制をしているのが通常であり、たとえば東京都であれば、パチンコ店の営業時間は午前10時から午後11時までとされている。
パチンコ店に設置されている遊技機は、厳格な基準と認定制度をクリアしたものであるため、営業開始後も遊技機を入れ替える際には変更承認の申請をする必要がある。
遊技機の入替にまで至らない部品交換や修理であっても、遊技機の性能に営業を及ぼすおそれがあるときは事前に承認を得なければならない。
なお、いわゆる「くぎ曲げ」と呼ばれるパチンコ台のくぎ調整も変更承認が必要な事項となり、無承認でくぎ曲げをしたとして逮捕された事例には以下のようなものがある。
パチンコ台に「くぎ曲げ」と呼ばれる不正な改造をしたとして、京都府警南署などは、南区のパチンコ店を経営する会社「ナカサン」(右京区)と社長(44)、店長(50)、副店長(38)を風俗営業法違反(無承認設備変更)容疑で書類送検した。いずれも容疑を認めているという。
発表によると、社長の男は店長や副店長と共謀し、府公安委員会の承認を受けずにパチンコ台2台の中央入賞口にあるくぎをハンマーなどで曲げて不正に改造した疑い。
2009年頃から「くぎ曲げ」を繰り返していたとみられ、店長は「くぎ調整表」と呼ばれるシートを作成。ミリ単位での調整を指示された従業員らが閉店後、測定工具を使って調整していたという。3人は「客が離れないように、利益を出すため調整する必要があった」と話しているという。
「くぎ曲げが同店で行われている」と通報があり、府警が調べていた。
パチンコ台は、風営法に基づき、国家公安委員会の指定機関による試験などに合格したものが店に設置される。店でくぎを意図的に曲げて改造する行為は、射幸心を過度にあおるため、修理が必要になるなど府公安委員会が承認した場合を除き、禁じられている。
(引用:読売新聞)
パチンコ店に関する広告や宣伝は、過度な射幸心のあおりや誤認を避けるために厳しい制限が設けられている。具体的には、風製法施行規則により「著しく射幸心をそそるおそれがある方法で客を誘引すること」が禁止されている。
具体的に、禁止される表現としては以下のとおりである。
区分 | 内容 |
---|---|
過度な射幸心のあおり | 「出玉爆発中!」「大当たり連発!」「万発確定!」など |
実績・数値の誇張 | 「昨日は5万発オーバー続出」「過去最高記録」など |
イベント告知 | 「新台入替イベント開催」「旧イベント日復活」など (「イベント」という言葉の使用がNG) |
特定機種の推奨 | 「この台は勝てる」「今日はこの機種が熱い」 |
開店・閉店前の整理券誘導 | 「○○時に並べば有利」など客を特定時間に誘導するような表現 |
SNS・LINE等でのくぎ調整告知 | くぎや設定に言及した内容はNG |
パチンコ店では、遊技の結果得られた出玉と賞品を交換することができるが、賞品の提供方法についても風営法に関する規制が設けられている。
賞品の提供方法に関する規制としては、以下のとおりである。
①商品は物品であること
・現金や商品券、プリペイドカードなど金銭に類するものの直接提供は禁止
・提供できるのは「物品としての賞品」に限られる(食品、日用品、家電など)
②賞品は自店で提供しなければならない
・客が出玉と引き換える賞品は、パチンコ店内(またはその施設)で直接提供される必要がある
・他店舗や外部施設に誘導する形は禁止
③商品の価格帯や種類のバランス
・提供する賞品の価格は9600円を超えないこと
・高額賞品ばかりを目立つ場所に陳列するなど、射幸心を煽る陳列方法は禁止
・「安価な賞品」と「中・高額な賞品」がバランス良く提供されている必要がある
なお、パチンコ店では、客が出玉を特殊景品に交換し、店外の景品交換所で現金化するといういわゆる「三店方式」がとられているが、パチンコ店が客から直接景品を買い取ることは風営法違反となる。このような行為で逮捕された事例としては、以下のようなものがある。
自身が経営するパチンコ店の客から景品を買い取ったとして、埼玉県警は、韓国籍の男(74)を風営法違反(景品買い取り)で逮捕した。
捜査関係者によると、男は、同県川越市内で経営するパチンコ店で客に提供した景品13個(計2万4000円)を、自身が実質的に経営する景品交換所で、客から直接買い取った疑いが持たれている。
以前は別の業者が経営する景品交換所が買い取っていたが、コロナ禍でパチンコ店の客足が落ちたため、撤退したという。県警は、パチンコ店の経営を維持するため、男が自身で景品交換所を経営するようになったとみている。
風営法ではパチンコ店が直接客から景品を買い取る行為を禁じている。
(引用:読売新聞)
パチンコは、客の射幸心を著しくそそるおそれがあり、過度にのめり込むとギャンブル依存症の危険があることから、パチンコ店の営業にあたっては風営法上厳しい規制が設けられている。いわゆる「くぎ曲げ」と呼ばれるくぎ調整をするだけでも無承認設備変更にあたり風営法違反となってしまうため、風営法のルールをしっかりと理解しておかなければ健全なパチンコ店経営は困難である。しかし、一般の方では風営法を正確に理解するのは困難であるため、風営法に詳しい弁護士に顧問弁護士をお願いして、継続的なアドバイスやサポートをしてもらうとよいだろう。
グラディアトル法律事務所は、東京と大阪の2拠点を中心に活動しており、ナイトビジネス業界で全国1000件以上の解決実績がある。風営法違反に関する刑事弁護の経験も豊富である。
また、グラディアトル法律事務所では、500店舗以上の風俗店の顧問弁護士を担当しており、ナイトビジネス業界に特化した弁護士事務所といえるだろう。トラブル対応だけではなくトラブル予防にも力をいれているため、実際にトラブルが生じていなくても気軽に相談してもらいたい。
パチンコ店は、風営法の風俗営業に該当するためパチンコ店開業にあたっては風俗営業(4号営業)許可が必要である。また、開業後も風営法上のさまざまな規制が適用されるため、風営法を遵守したパチンコ店経営をするには、弁護士によるアドバイスやサポートが不可欠である。
パチンコ店の開業・営業にあたって風営法上の疑問や悩みが生じたときは、風営法に詳しいグラディアトル法律事務所まで相談してもらいたい。