「無店舗型性風俗特殊営業にはどのような種類がある?」
「無店舗型性風俗特殊営業を始めるための条件や手続きを知りたい」
「無店舗型性風俗特殊営業の開業にあたっての風営法上のポイントを知りたい」
無店舗型性風俗特殊営業とは、店舗を設けることなく人を派遣して性的サービスを提供または通信手段を用いて性的好奇心をそそる物品を販売等する営業のことである。無店舗型性風俗特殊営業には、派遣型ファッションヘルス(デリヘル)などの1号営業とアダルトビデオ等通信販売を行う2号営業の2種類がある。
無店舗型性風俗特殊営業は、風俗営業のような人的要件・場所的要件・構造的要件がないため自由に開業できるのが特徴であるが、風営法上のルールを遵守しなければ風営法違反によるペナルティを受けるリスクがあるため注意が必要である。
本記事では、
・風営法の無店舗型性風俗特殊営業の種類
・風営法の無店舗型性風俗特殊営業を開業するための条件と手続き
・無店舗型性風俗特殊営業の開業に関する風営法のポイント
などについてわかりやすく解説する。
これからデリヘルなどの無店舗型性風俗特殊営業を始めようとする方は、風営法に詳しい弁護士による継続的なサポートを受けることが風営法違反を回避するために有効であるため、早めに弁護士に相談するようにしてもらいたい。
無店舗型性風俗特殊営業とは、店舗を設けることなく人を派遣して性的サービスを提供または通信手段を用いて性的好奇心をそそる物品を販売等する営業のことである。
無店舗型性風俗特殊営業は、1号営業と2号営業の2種類に区分されている。
無店舗型特殊営業の1号営業とは、人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもののことである。具体的には、派遣型ファッションヘルス(デリヘル)などがこれにあたる。
1号営業の特徴としては、以下のような点が挙げられる
・店舗を構えずに出張型で営業する
・事務所を拠点として広告宣伝や受付などを行う
・従業員が顧客の指定する場所に派遣される
無店舗型特殊営業の2号営業とは、電話その他の方法による客の依頼を受けて、専ら、写真、ビデオテープその他の物品で政令で定めるものを販売し、又貸し付ける営業で当該物品を配達し、又は配達させることにより営むもののことである。具体的には、アダルトビデオ等通信販売がこれにあたる。
2号営業の特徴としては、以下のような点が挙げられる。
・アダルトビデオやグッズなどを通信販売で提供する営業形態
・店舗を持たずにネットや電話注文で販売をする
・直接の対面サービスではなく物品の販売等に限定
風営法の無店舗型性風俗特殊営業は、風俗営業のような許可制ではなく届出制であるため、必要書類を収集・作成し、警察署に届出すれば、届出の受理から10日後に開業することが可能である。
また、風俗営業のような人的要件・場所的要件・構造的要件がなく、店舗型特殊性風俗営業(ソープランドなど)のような立地規制もないため、開業のハードルは比較的低いのが特徴といえるだろう。
「デリヘル」というと風営法で厳しい規制があり、簡単に始められないというイメージを持たれる方も多いが、実は開業自体はそこまで難しいものではない。
無店舗型性風俗特殊営業を開業するには、以下のような風営法上の届出手続きが必要である。
無店舗型性風俗特殊営業の開業を検討している方は、まずは所轄の警察署に事前相談をするべきである。
警察署で事前相談をすれば、無店舗型性風俗特殊営業の開業に必要な書類などを案内してもらえるため、スムーズに届出手続きを進めることが可能になる。警察署によって風営法に関する判断が異なることもあるため、事前に相談しておくのが安心だろう。
無店舗型性風俗特殊営業は、営業の本拠となる事務所を定めなければならない。「無店舗型」だからといって事務所も不要になるわけではない点に注意が必要である。
事務所の立地について特別な制限はないが、デリヘルの事務所としての用途になると賃貸人から許可が出ない可能性もあるため、早めに探すべきだろう。
無店舗型性風俗特殊営業の届出にあたっては、以下の書類が必要になる。
・無店舗型性風俗特殊営業の営業開始届出書
・営業の方法を記載した書類
・事務所の使用について権原を有することを疎明する書類
・住民票の写し
・法人の場合は、定款・法人登記事項証明書および役員全員の住民票の写し
なお、デリバリーヘルスの場合は、以下の書類も追加で必要になる。
・事務所の平面図
・待機所の平面図
・待機所の使用について権原を有することを疎明する書類
上記の必要書類が準備できたら営業の本拠となる事務所の所在地を管轄する警察署に書類を提出して無店舗型性風俗特殊営業の届出を行う。
なお、無店舗型性風俗特殊営業の届出は、営業開始日の10日前までに行わなければならないため注意が必要だ。
無店舗型性風俗特殊営業の届出が受理されてから10日後に営業を開始することができるようになる。
項目 | 内容 |
---|---|
使用承諾書の必要性 | 事務所・待機所の設置には所有者からの「使用承諾書」が必要。専門の不動産会社に相談が有効。 |
受付所の設置は原則NG | 受付所は禁止区域規制の対象。新規設置は困難で、既得権がない限り不可。 |
営業時間の制限なし | 無店舗型性風俗は24時間営業可能。他の風俗営業と異なり深夜営業もOK。 |
屋外広告は禁止 | 屋外での広告禁止のためネット集客が中心。年齢制限表示も必須。 |
従業員名簿の作成・保管 | 氏名・住所・生年月日等を記載した従業員名簿を作成し、保管が必要。 |
年齢確認の徹底 | キャスト・客ともに18歳以上が条件。顔写真付きの身分証で年齢確認が必須。 |
無店舗型性風俗特殊営業を開業する際の風営法上のポイントには、以下のようなものがある。風営法違反にならないようにするためにも、以下のポイントを押さえておくことが重要である。
無店舗型性風俗特殊営業の届出をする際には「事務所の使用について権原を有することを疎明する書類」が必要になる。これは一般的に「使用承諾書」と呼ばれる書面で、賃貸物件であればその物件の所有者からもらう必要がある。
デリヘルなどの無店舗型性風俗特殊営業の事務所となると一般的なアパートやマンションでは、所有者から承諾を得られないケースも少なくない。そのため、無店舗型性風俗特殊営業の賃貸物件を専門に扱う不動産会社に相談してみるべきだろう。
無店舗型性風俗特殊営業にでは、受付所をの設置をするホテヘルという業態がある。
「受付所」とは、性的サービス以外で客に接する業務を提供する場所をいう。キャストの写真等を見せて料金を受領する場所などが典型だ。
受付所については店舗型性風俗特殊営業と同様の禁止区域の規制を受けるため、ほとんどの場所で受付所を新規で設置することはできない。既得権に基づいて受付所を設置して営業をしている店舗以外で受付所を設置して営業するのは難しい現状にある。
無店舗型性風俗特殊営業は、営業時間に関する制限はないため、24時間営業のデリヘルを行うことも可能である。
ソープランドなどの店舗型性風俗特殊営業やホストクラブ・キャバクラのような風俗営業では、午前0時以降の深夜営業が禁止されているため、営業時間に制限がないのは無店舗型性風俗特殊営業の特徴といえるだろう。
無店舗型性風俗特殊営業は、屋外への広告や宣伝が禁止されているため、広告の貼りつけやビラ配布を行うことができず、求人広告を出すこともできない。
そのため、基本的にはホームページなどを活用したネット集客がメインになるだろう。ただし、ネット集客をする際には、ホームページ上で18歳未満の閲覧や利用を禁止する旨のメッセージを掲載するなどの取り組みが必要である。
無店舗型性風俗特殊営業でキャストを雇用する際には、従業員の氏名、住所、生年月日などを記載した従業員名簿の作成および備付が必要である。
無店舗型性風俗特殊営業のキャストの年齢は18歳以上でなければならない。また、無店舗型性風俗特殊営業の客も18歳以上でなければならないため、無店舗型性風俗特殊営業の経営者は、キャストおよび客の年齢確認を徹底するようにしてほしい。
特に、キャストを雇用する際は、運転免許証やマイナンバーカードなどの顔写真付きの身分証明書により年齢確認をすることが重要である。
なお、18歳未満の女性を雇い、性的なサービスを提供させたとして、デリヘルの経営者が逮捕された事例がある。
18歳未満の女性を無店舗型風俗店に雇い、客を相手にみだらな行為をさせたなどとして、山口県警山口南警察署は、山口県防府市に住む風俗店経営の男(42)を児童福祉法違反と風営法違反の疑いで逮捕したと発表しました。
警察によると、男は、山口県内在住の18歳未満の女性を、自身が経営する無店舗型風俗店に雇い、去年6月から9月にかけて3回にわたり、市内のホテルで客を相手にみだらな行為をさせるなどした疑いが持たれています。
警察は、男を児童福祉法違反(淫行させる行為)と風営法違反(年少者使用)の容疑で逮捕しました。
調べに対し男は、「年齢をきちんと確認せずに性的サービスをさせていた」と容疑を認めているということです。
(引用:TYS)
デリヘルなどの無店舗型性風俗特殊営業の経営者は、風営法だけではなく売春防止法違反にならないように注意が必要である。
売春防止法では、お金をもらって不特定の客と性交をすることを「売春」と定義して、以下のような行為を規制している。
・公衆の目に触れるような場所での売春の勧誘行為
・周旋
・困惑や暴行・脅迫により売春させる行為
・売春をさせる目的での前貸し等の利益供与
・売春をさせる内容の契約をする行為
・売春を行う場所の提供
・管理する場所に居住させて売春させることを仕事とする行為
・売春場所の提供や管理売春を仕事とする人に金や土地・建物を提供する行為
売春防止法の対象となる行為は、「性行為」であり、フェラや素股などの性交類似行為は対象外であることから、本番行為をしているデリヘルでは売春防止法違反となるリスクが高いといえるだろう。
デリヘルの経営者としては、キャストや客に対して本番行為の禁止を周知するなどして、売春防止法違反にならないような対策が必要である。
【事案の概要】
今回のご依頼者は東京都内でデリヘルを経営していた男性(Dさん)と、その友人でラブホテルを経営していた男性(Lさん)の2人。
Dさんは、適法に「無店舗型性風俗特殊営業」の届出をした上で、都内の歓楽街に事務所を置きデリヘルの営業をしており、Lさんは、Dさんの事務所から200メートルほど離れた場所でラブホテルを経営していた。
DさんとLさんは数年前に知人の紹介で知り合い、金銭の貸し借りやデリヘルでラブホテルの利用をするなど親密な関係にあった。
警察は、DさんとLさんが親密な関係にあることや、経済的なつながりがあることから、Lさんのラブホテルは実質的にDさんのデリヘルの店舗であり、共謀して風営法違反の営業をしているのではないかと疑い、2人への捜査を開始した。
その後、警察がDさんの事務所の捜索差押を行ったため、逮捕されるのではないかと不安になったDさんは、風営法違反等の刑事事件を多く取り扱っている弊所に相談することになった。
【結果】
予想通りDさんとLさんは逮捕されてしまったが、事前に相談を受けていたため、逮捕後直ちに弁護士が接見に向かうことができた。
また、DさんとLさんは、弁護士からの事前のアドバイスに従って黙秘権の行使や署名押印の拒否など適切な対応をとることができたため、警察が想定した筋書きで処理されることを回避することができた。
弁護士は、DさんとLさんが逮捕に続く勾留をされないよう、意見書を提出して、勾留の要件を満たさないことを主張したものの、裁判官は検察官の勾留請求を認め、DさんとLさんは勾留されることになった。
もっとも、本件における最大の目標は不起訴の獲得であったため、弁護士はその後もDさん及びLさんとの接見を重ね、Dさんの店が店舗型とはいえないことを示す客観的証拠を独自に収集し、過去の判例も参照した法的見解を付した意見書とともに検察官に提出した。その結果、DさんとLさんは身柄を解放され、晴れて不起訴となり、従来の営業を継続できるようになった。
無届で無店舗型性風俗特殊営業をした場合、風営法違反となり、6月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれらが併科される。
無店舗型性風俗特殊営業は、ソープランドなどの店舗型性風俗特殊営業やキャバクラ・ホストクラブなどの風俗営業に比べて、開業のハードルが低いため、数ある風俗業種の中でも比較的始めやすい業種だといえる。
しかし、開業のハードルが低くても他の風俗業種と同様に風営法による厳しい規制が適用されるため、開業後は風営法のルールを遵守して経営していかなければならない。風営法は、非常に複雑かつ抽象的な規定であり、一般の方では正確に内容を理解するのは困難であるため、風営法を遵守した経営をするには、風営法に強い弁護士によるサポートが不可欠といえるだろう。
グラディアトル法律事務所は、東京と大阪の2拠点を中心に活動しており、ナイトビジネス業界で全国1000件以上の解決実績がある。風営法違反に関する刑事弁護の経験も豊富である。
また、グラディアトル法律事務所では、500店舗以上の風俗店の顧問弁護士を担当しており、ナイトビジネス業界に特化した弁護士事務所といえるだろう。トラブル対応だけではなくトラブル予防にも力をいれているため、実際にトラブルが生じていなくても気軽に相談してもらいたい。
無店舗型性風俗特殊営業の代表的な業種は、いわゆる「デリヘル」と呼ばれる性風俗である。デリヘルは、他の風俗業種の中でも開業のハードルが低いため、資金や人材を確保できれば比較適用に開業できるといえるだろう。
もっとも、風営法を遵守してデリヘルの営業を行うには、風営法に詳しい弁護士によるサポートが不可欠であるため、まずはグラディアトル法律事務所に相談をしてもらいたい。