「ナイトクラブを開業するには風営法上どのような手続きが必要?」
「風営法の許可が必要なナイトクラブとは?」
「ナイトクラブ開業に必要な許可条件とは?」
ナイトクラブは、風営法上、特定遊興飲食店営業に該当するため、ナイトクラブを開業するには特定遊興飲食店営業の許可が必要である。ただし、風営法が適用されるかどうかは「ナイトクラブ」という名称で決まるのではなく、主に以下の4つの条件に当てはまるものが風営法の規制対象となる。
・深夜に営業すること
・客に遊興をさせること
・客に酒類を提供すること
・遊興のための設備を設けていること
業態によって風営法上必要な許可や届出などの手続きが異なるため、ナイトクラブの開業を検討中の方は、開業予定の業態が風営法上どのような位置づけになるのか押さえておくことが重要である。
本記事では、
・風営法の特定遊興飲食店営業の許可が必要なナイトクラブの4つの条件
・ナイトクラブを開業するための風営法の許可条件
・ナイトクラブを開業するための風営法の手続き
などについてわかりやすく解説する。
ナイトクラブの開業や運営にあたって風営法上の疑問点が生じたときは、すぐに弁護士に相談することをおすすめする。
ナイトクラブは風営法上の特定遊興飲食店営業に該当するため、ナイトクラブの開業には特定遊興飲食店営業の許可が必要になる。
特定遊興飲食店営業とは、設備を設けて客に遊興させ、かつ客に飲食をさせる営業で、午前6時後翌日の午前0時前の時間においてのみ営むもの以外のものと定義されている。特定遊興飲食店営業に該当する業種としては、以下のようなものが挙げられる。
・ナイトクラブ
・ディスコ
・DJバー
・ライブハウス
・ショーパブ
・スポーツバー
特定遊興飲食店営業に該当するかどうかの基準は、次章で詳しく解説するが、簡単に言えば深夜に営業し、客に遊興させてお酒を提供していることがポイントである。
要件 | 概要 |
---|---|
深夜に営業すること | 午前0時〜6時の営業が可能。キャバクラやホストクラブと異なり深夜営業が認められる。 |
客に遊興をさせること | 不特定の客にショー・ダンス・演奏・スポーツ観戦などを提供する。特定の客への行為は接待に該当。 |
客に酒類を提供すること | 酒類を提供する場合に該当。遊興がなく深夜のみ酒を出す場合は届出で可。 |
遊興のための設備を設けていること | カラオケ・舞台・DJブース・映像機器などを備える。 短期イベント等は対象外。 |
風営法の特定遊興飲食店営業の許可が必要なナイトクラブは、以下の4つの要件を満たしているナイトクラブである。
特定遊興飲食店営業の要件の1つ目は、深夜に営業することである。
深夜営業とは、午前0時から午前6時までの間に営業を行うことをいう。風営法の許可が必要なキャバクラやホストクラブは深夜営業が禁止されているが、特定遊興飲食店営業は深夜営業が可能である点が特徴として挙げられる。
特定遊興飲食店営業の要件の2つ目は、客に遊興させることである。
遊興とは、営業者が積極的に働きかけて客に遊び興じさせることを意味する。たとえば、以下のようなものが特定遊興飲食店営業の「遊興」にあたる。
・不特定の客にショーやダンスなどを見せる
・不特定の客に歌手が歌ったり、バンドが生演奏をする
・ダンスができる設備を設けて不特定多数の客にダンスをさせる
・スポーツなどの映像を流して、不特定の客に見せ応援させる
特定遊興飲食店営業は「不特定の客」に対して、上記のような働きかけをするものをいい、「特定の客」に対して行うものは接待行為に該当し、キャバクラやホストクラブのように風俗営業許可の対象となる。
特定遊興飲食店営業の要件の3つ目は、客に酒類を提供することである。
飲食店であっても酒類を提供しないものについては、この要件に該当しないため特定遊興飲食店営業の許可は不要である。他方、客に遊興させずに深夜時間帯に酒類を提供する場合は、風営法の深夜酒類提供飲食店営業の届出で足りる。
特定遊興飲食店営業の要件の4つ目は、不特定の客に対して遊興させるための設備を設けていることである。
このような設備に該当するものとしては、以下のようなものが挙げられる。
・カラオケ機器
・演奏のための舞台
・DJブース
・スポーツ観戦のための映像機器
なお、特定遊興飲食店営業は、継続的な営業を前提としているため、短期間のイベントやふぇす、結婚式の二次会などは特定遊興飲食店営業には該当しない。
ナイトクラブを開業するためには、特定遊興飲食店営業の許可が必要になる。特定遊興飲食店営業の許可を得るには、以下の3つの要件を満たさなければならない。
区分 | 要件 |
---|---|
許可できない人(人的要件) | ・破産して復権を得ていない者 ・刑罰を受け5年以内の者 ・暴力的不法行為の恐れがある者 ・薬物中毒者・精神障害により適切な業務遂行が困難な者 ・過去5年以内に許可取消・返納をした者やその法人 ・未成年者や該当する役員を含む法人 |
許可できない場所(場所的要件) | ・都道府県で定められた許容地域内であること ・住居地域に隣接する場合は境界から20m以上離れていること ・保全対象施設(学校など)の周囲にないこと |
構造・設備の基準(構造的要件) | ・客室床面積が33㎡以上 ・1m超の間仕切りや見通しを妨げる設備を設けない ・風俗環境を害する設備・装飾を設けない ・施錠可能な出入口を設けない(外部に通じるものは例外) ・照度が10ルクス以上を維持できる構造であること ・騒音・振動が条例基準内となる構造であること |
以下のいずれかの条件に該当する人は、特定遊興飲食店営業の許可を受けることはできない。
①破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
②1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は一定の罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
③集団的に、又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者
④アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
⑤精神機能の障害により風俗営業の業務を適正に実施するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
⑥風俗営業の許可を取り消されて5年を経過しない者
⑦風俗営業の取消処分に係る聴聞の期日等の公示日から取消し等の決定をする日までの間に、許可証を返納した者で、当該返納の日から起算して5年を経過しないもの
⑧⑦の規定する期間内に合併により消滅した法人又は許可証を返納した法人
⑨⑦の規定する期間内に分割により、聴聞に係る風俗営業を継承させ、若しくは分割により、当該風俗営業以外の風俗営業を継承した法人
⑩営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者
⑪法人の役員、法定代理人が上記①から⑤までに掲げる事項に該当するとき
特定遊興飲食店営業の許可を受けるには、以下の場所的要件を満たす必要がある。
・各都道府県にて告示された営業所設置許容地域内にあること
・住居集合地域に隣接している場合は、その境界線から20m以上の距離が必要
・営業所の周辺に保全対象施設がないこと
特定遊興飲食店営業の許可を受けるには、構造・設備に関して以下の要件を満たす必要がある。
・客室の床面積が33㎡以上であること
・おおむね1mを超える間仕切りや衝立などの見通しを妨げる設備を設けないこと
・善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと
・室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない
・営業所内の照度が10ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
・騒音又は振動の数値が条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
ナイトクラブを開業するための風営法の許可申請の手続きは以下のとおりである。
特定遊興飲食店営業の許可申請に必要な書類は、以下のとおりである。
①許可申請書
②営業の方法を記載した書類
③営業所の使用について権原を有することを疎明する書類
④営業所の平面図及び営業所の周囲の略図
⑤住民票の写し
⑥人的欠格事由に該当しない旨の誓約書
⑦市町村の発行する身分証明書
⑧法人の場合は、定款・法人に係る登記事項証明書及び役員に係る上記⑤から⑦までの書面
⑨管理者を選任する場合は、選任する管理者の誓約書、上記⑤から⑦までの書面
⑩管理者の写真2枚
特定遊興飲食店営業の許可申請をするには、2万4000円の手数料が必要になる。
特定遊興飲食店営業の許可申請の窓口は、営業所の所在地を管轄する警察署である。
特定遊興飲食店営業の許可申請は、以下のような流れで行われる。
・申請書や必要書類の準備
・営業所の所在地を管轄する警察署に許可申請
・公安委員会で許可条件の審査および調査の実施
・許可の場合は許可証が交付、不許可の場合は不許可通知書が交付
ナイトクラブは、風営法上の「特定遊興飲食店営業」に該当するため、風営法の許可を得なければ営業することができない。また、ナイトクラブの運営にあたっても風営法が適用されるため、風営法のルールを遵守していくことが重要である。
万が一、風営法違反を犯してしまうと営業停止や営業許可の取り消しなどの行政処分、罰金や懲役刑などの刑事処分が下されるリスクがあるため注意しなければならない。ナイトクラブの運営にあたって風営法違反となるリスクを最小限に抑えるには、風営法に強い弁護士によるサポートが不可欠であるため、風営法に強い弁護士を顧問弁護士にするのがおすすめである。
グラディアトル法律事務所は、東京と大阪の2拠点を中心に活動しており、ナイトビジネス業界で全国1000件以上の解決実績がある。風営法違反に関する刑事弁護の経験も豊富である。
また、グラディアトル法律事務所では、500店舗以上の風俗店の顧問弁護士を担当しており、ナイトビジネス業界に特化した弁護士事務所といえるだろう。トラブル対応だけではなくトラブル予防にも力をいれているため、実際にトラブルが生じていなくても気軽に相談してもらいたい。
ナイトクラブは、風営法の「特定遊興飲食店営業」に該当するため、風営法の許可を得なければ開業することができない。特定遊興飲食店営業の許可が必要な業態であるかは、法的知識がなければ正確に判断することはできないため、ナイトクラブの開業をお考えの方は、一度弁護士に相談することをおすすめする。
また、ナイトクラブ開業後のサポートを含めて顧問弁護士を利用するのもおすすめである。風営法に強い弁護士をお探しの方は、グラディアトル法律事務所までぜひ相談してもらいたい。