「ストリップ劇場の新規開業が難しいって本当なの?」
「ストリップ劇場の開業・営業に関する風営法の規制を知りたい」
「ストリップ劇場は公然わいせつ罪にあたらない?」
ストリップ劇場は、風営法の「店舗型性風俗特殊営業」に該当するため、ストリップ劇場を開業するには性風俗関連特殊営業の届出が必要である。しかし、ストリップ劇場には、用途地域の規制および保全対象施設との距離規制などがあり、新規開業は事実上、困難な状況となっている。
もっとも、既存店の法人経営権を取得すればストリップ劇場の営業も可能になるが、ストリップ劇場の営業にあたっては風営法上の厳しい規制があるため風営法違反にならないように注意が必要である。また、風営法以外にも刑法の「公然わいせつ罪」で摘発された事例もあるため、その点にも注意が必要となる。
本記事では、
・ストリップ劇場を開業するための風営法上の手続きとその流れ
・ストリップ劇場の新規開業が困難な理由
・ストリップ劇場の営業にあたって注意すべき公然わいせつ罪
などについて詳しく解説する。
風営法違反や公然わいせつ罪にならないように営業するには、法律の専門家である弁護士のサポートが不可欠となるため、不安があるときはすぐに弁護士に相談するようにしてほしい。
ストリップ劇場は、風営法の「店舗型性風俗特殊営業」のうち3号営業に該当する。
店舗型性風俗特殊営業とは、店舗を設けて、その店舗内で性的なサービスを提供する営業をいい、店舗型性風俗特殊営業は、1号営業から6号営業の6つに分類されている。
このうち、3号営業は、「性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行その他の善良の風俗又は少年の健全な育成に与える影響が著しい興行の用に供する興行場として政令で定めるものを経営する営業」と定義されており、いわゆるストリップ劇場がこれにあたる。
そのため、ストリップ劇場を開業するには風営法上の手続きを踏まなければならない。
店舗型性風俗特殊営業に該当する業種を営むには、風営法上の「届出」が必要になる。
これに対してキャバクラやホストクラブなどは風営法上の「許可」が必要になるが、厳しい規制が必要な性風俗特殊営業が届出制であることに疑問を感じる方もいるかもしれない。
これに関しては、性風俗特殊営業に許可制を導入すると政府が「性」というデリケートな分野に介入し、許可というお墨付きを与えてしまうのを避けるのが狙いだと考えられている。
ただし、届出制であっても実際には実質的には許可制と変わらないまたはそれ以上に厳しい規制があるため、簡単に開業できるわけではない点に注意が必要である。
ストリップ劇場を開業するために必要な風営法上の手続きをその流れは、以下のとおりである。ただし、後述するようにストリップ劇場には厳しい規制があるため、新規開業は事実上困難である。
ストリップ劇場の開業を検討しているなら、まずは警察に事前相談をするべきである。
警察に事前相談をすることで、ストリップ劇場の開業に必要な手続きや書類などをアドバイスしてもらえるため、今後の手続きをスムーズに進めることができる。
ストリップ劇場を開業するためには、以下のような書類を準備・作成する必要がある。
・店舗型性風俗特殊営業の営業開始届出書
・営業の方法を記載した書類
・営業所の使用について権原を有することを疎明する書類
・営業所の平面図及び営業所の周囲の略図
・住民票の写し
・法人の場合は、定款・法人登記事項証明書及び役員全員の住民票の写し
・業務の実施を統括管理する者に係る住民票の写し
ストリップ劇場の開業に必要となる書類の準備・作成ができたら、営業開始の10日前までに営業所の所在地を管轄する警察署に提出する。
届出にあたって手数料はかからないが、行政書士などに申請手続きの代行を依頼すると報酬の支払いが必要になる。
店舗型性風俗特殊営業の届出が受理されると、受理日から10日後にストリップ劇場の営業が可能となる。
ストリップ劇場には厳しい場所的規制があるため、新規開業は事実上困難であると言われている。具体的には、「用途地域の規制」と「保全対象施設との距離規制」が挙げられる。
ストリップ劇場は、どこでも開業できるわけではなく、都市計画法によって指定された用途地域の規制があるため、営業可能な用途地域は、以下の地域に限定されている
【営業不可な用途地域】
・第一種低層住居専用地域
・第二種低層住居専用地域
・第一種中高層住居専用地域
・第二種中高層住居専用地域
・第一種住居地域
・準住居地域
・工業専用地域
これらの地域は、居住・教育・工業用途などが優先されるため、風俗営業等が周辺環境に与える影響を考慮して禁止されている。
【営業可能な用途地域】
・商業地域
・近隣商業地域(条例により禁止されているケースが多い)
・準工業地域(条例により禁止されているケースが多い)
ストリップ劇場の営業可能な用途地域は、商業地域・近隣商業地域・準工業地域の3種類になるが、実際には条例による規制があるため、ストリップ劇場の営業が可能な地域は商業地域に限られる。
用途地域の規制をクリアしたとしても保全施設との距離規制があるため、ストリップ劇場を開業できる地域はさらに限定される。
風営法では、学校、図書館、児童福祉施設等の保全対象施設の周囲200mの区域内において、ストリップ劇場などの店舗型性風俗特殊営業を営んではならないと規定されている(風営法28条1項)。「児童福祉施設」には、保育所なども含まれるため、周囲200m以内に学校・図書館・保育所の存在しない場所を探すだけでも一苦労である。
また、都道府県の条例では風営法に上乗せした規制を設けているケースが多く、例えば東京都の風営法施行条例では、保全対象施設に「病院及び診療所」が追加されている。さらに、条例では地域を定めてその地域での性風俗特殊営業を禁止することも可能であるため、ストリップ劇場を開業できる地域は事実上存在しないといっても過言ではない。
ストリップ劇場のような店舗型性風俗特殊営業には「既得権制度」と呼ばれる制度が存在するため、風営法や条例により新規開業が困難な地域であっても、規制以前から合法的に営業している店舗については継続的に営業を継続することが可能である。
既得権制度は、個人営業の場合には営業権の承継が認められないため一代限りとなるが、法人営業の場合は、法人が存続する限り営業することが可能であるため、既存店の法人経営権を取得する方法であれば、ストリップ劇場を開業することができる。
ただし、店舗を更地にして新たにストリップ劇場をオープンすることはできず、大規模な増改築も制限されているため、老朽化した店舗で営業を続けるのは困難なケースも少なくない。
ストリップ劇場を営業する際には、刑法の公然わいせつ罪で摘発されるリスクに注意が必要である。
公然わいせつ罪とは、不特定または多数の人が認識できる状態でわいせつな行為をした場合に成立する犯罪である(刑法174条)。
具体的には、以下のような行為が公然わいせつ罪に該当します。
・公園で下半身を露出
・車の中で性行為をしていて、それが外から見える
・ストリートで全裸になるパフォーマンス
・他人に見える状態で自慰行為をする
・SNSライブ配信で性行為や露出をする
公然わいせつ罪に該当する行為をすると、6月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処せられる。
ストリップ劇場は、舞台の上で女性ダンサーが音楽に合わせて服を脱いでいくところを鑑賞する性的娯楽施設である。
女性ダンサーによる演技は、わいせつな行為に該当すると考えられているため、ストリップ劇場で行われるショーは、基本的には公然わいせつ罪に該当するといえるだろう。
ただし、現実には公然わいせつ罪に該当するようなストリップ劇場も警察が黙認していることで摘発されていないだけであり、ストリップ劇場の営業には公然わいせつ罪で摘発されるリスクと隣り合わせにあることを理解しておくべきであろう。
なお、後述するストリップ劇場の摘発事例では、女性ダンサーが下半身を露出し、それをライトで照らすなど悪質性が高いことから公然わいせつ罪で摘発されてしまった。
ストリップ劇場が公然わいせつ罪で摘発された実際の事例には、以下のようなものがある。
ショーで下半身を露出するなどしたとして、大阪府警曽根崎署は、公然わいせつ容疑でストリップ劇場「天満東洋ショー劇場」(大阪市北区)の経営者(66)とダンサーら男女計10人を現行犯逮捕した。劇場ホームページでは「西日本最大級のストリップ劇場」としている。
同署によると、入場料は1人4500円で、女性ダンサーの下半身を撮影できるなどの特典が付いていた。1年間で約2億6千万円の売り上げがあったとみられる。
4月に情報提供を受けた署は、下半身をライトで長時間照らすなど悪質性が高いことを踏まえて、逮捕に踏み切った。
10人の逮捕容疑は、観客約60人の前でダンサーが衣装を脱いで下半身を露出し、デジタルカメラで撮影させるなどしたとしている。
(引用:産経新聞)
ストリップ劇場には厳しい規制があるため、新規開業は事実上困難である。そのため、ストリップ劇場を営業するには、既存店の法人経営権を取得する方法が唯一残された手段といえるだろう。
また、ストリップ劇場は、公然わいせつ罪で摘発されるリスクと隣り合わせであるため、ストリップ劇場の営業をする際には、法律の専門家によるサポートが不可欠となる。顧問弁護士を依頼して継続的なアドバイスやサポートを受けることにより、風営法違反や公然わいせつ罪で摘発されるリスクを最小限に抑えることができるため、まずは弁護士に相談することをおすすめする。
グラディアトル法律事務所は、東京と大阪の2拠点を中心に活動しており、ナイトビジネス業界で全国1000件以上の解決実績がある。風営法違反に関する刑事弁護の経験も豊富である。
また、グラディアトル法律事務所では、500店舗以上の風俗店の顧問弁護士を担当しており、ナイトビジネス業界に特化した弁護士事務所といえるだろう。トラブル対応だけではなくトラブル予防にも力をいれているため、実際にトラブルが生じていなくても気軽に相談してもらいたい。
ストリップ劇場は、厳しい場所的規制があり新規開業は事実上困難である。そのため、ストリップ劇場は、既存店による営業または既存店の法人経営権を取得した上での営業がメインとなるだろう。
このようなストリップ劇場の営業は、公然わいせつ罪で摘発されるリスクと隣り合わせであるため、リスクを最小限に抑えるためにも、まずはグラディアトル法律事務所まで相談してもらいたい。