法律上、結婚している既婚者(夫・妻)と不倫をした場合、不倫をされた(妻・夫)は、夫婦の相手方と不倫相手に対して損害賠償請求ができます。
では、夫が風俗店通いをした場合、妻は夫や風俗嬢に対して不貞(不倫)の慰謝料の請求ができるのでしょうか?
夫と離婚できるのでしょうか?
妻が風俗店で働いていた場合、夫は風俗店の客に慰謝料請求ができるのでしょうか?
風俗と不倫・不貞について、複数の裁判例に照らして弁護士が徹底解説いたします。

風俗での不倫について、性行為を伴わない、性的なサービスを受けることもあります。
「不倫」や「浮気」という言葉は、テレビ等でも耳にする機会が多いかと思います。そして「不倫(浮気)」された側からすれば、配偶者に離婚や慰謝料請求、不倫(浮気)相手にも慰謝料を請求したいと多くの方が思うことでしょう。
法律上は「不倫」や「浮気」という用語はなく、「不貞」という言葉が使われます。
具体的には、民法770条1項1号は「配偶者に不貞な行為があったとき」と定め、裁判上の離婚ができる場合と定めています。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
この不貞行為の定義について最高裁は、「貞操義務に違反する行為全般を指すのではなく、自由な意思に基づき、自己の配偶者以外の者と性関係を結ぶことをいう」としています(最判昭和48年11月15日民集27巻10号1323頁)。
民法七七〇条一項一号所定の「配偶者に不貞の行為があつたとき。」とは、配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいうのであつて、この場合、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わないものと解するのが相当である。
すなわち、法律上は、自分の配偶者(夫・妻)以外との性的関係を結ぶこと(性交)が「不貞」行為であり、離婚事由や慰謝料請求の対象となります。
ですので、これを逆からみれば一般的に「不倫」や「浮気」といえるような行為があったとしても、そこに性行為がなければ、基本的には法律上の「不貞行為」にはなりません。
原則は、性行為がなければ法律上の「不貞行為」にはならず、離婚や慰謝料・損害賠償請求は認められません。
しかし、例外として
・性行為がなくても「婚姻を継続し難い重大な事由」があれば離婚できる
・性行為がなくても婚姻共同生活の平和・平穏を害する行為は不法行為となり慰謝料・損害賠償請求ができる
性行為のない風俗でのサービスは、法律上の「不貞行為」には該当しないと判断されることが多いですが、複数回通っている、家計に必要なお金を使ってしまう、店以外でも風俗嬢と会っているなどの事情がある場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして離婚が認められることがあります。
また、同様に、婚姻共同生活の平和・平穏を害する行為であれば、不貞行為とはいえなくても、不法行為となり慰謝料・損害賠償請求が認められることがあります。
| 判例の年月日 | 利用店舗の種類(デリヘル、ピンサロなど) | 誰の誰に対する請求か(客の配偶者→風俗嬢など) | 結論 | 概要 |
|---|---|---|---|---|
| 東京地裁 令和3年1月18日 | ホテヘル | 妻(配偶者)→風俗嬢(夫が客) | 慰謝料請求棄却 | 3週間で2回程度の利用にとどまり、本件店舗の従業員と利用客という関係を超えた個人的な男女関係は認められない。性交渉(本番)があったとしても婚姻平和侵害の程度は客観的に軽微として不法行為を否定。 |
| 東京地裁 平成27年7月27日 | ソープランド(店内)+退店後の店外関係継続 | 妻(配偶者)→元ソープ従業員 | 店内分は否定/店外継続分は一部認容 | 店内での性交渉自体は直ちに婚姻共同生活の平和を害するとはいえず不法行為否定。退店後の関係継続は婚姻平和侵害として慰謝料を認めた。 |
| 東京地裁 令和3年11月29日 | ピンクサロン | 配偶者→配偶者 | 不貞行為認定せず | ピンサロ利用は認定されたが、具体的な性的サービス内容の立証不足により不貞行為とは認められなかった。 |
| 福岡地裁 平成27年12月22日 | デリバリーヘルス | 妻→夫 | 慰謝料30万円 | デリヘル嬢との行為を動画撮影していたことが発覚。本番はないが婚姻関係を害する不法行為と認定。 |
| 東京地裁 令和5年7月12日 | JKリフレ | 妻→女性従業員 | 慰謝料60万円 | 既婚者と知りつつ約10回性交渉を継続。メッセージ内容などから不法行為成立。 |
| 東京地裁 平成26年4月14日 | クラブ(枕営業)等 | 妻→相手女性 | 慰謝料否定 | 対価を得た性交渉は商売としての性サービスであり婚姻平和侵害とまではいえないと判断。 |
これらの判例を見ると、原則として、風俗店でのサービスを受けただけであれば本番行為があったとしても不倫(不貞行為)には該当しないと判断されることが多いです。
風俗での請求が認められた3つの判例については、それぞれ、認められるだけの特殊事情があります。
ソープランドを辞めた後も個人的にあって性行為をしていた、生まれてくる子供を撮るために買ったカメラで風俗でのサービスを撮影したことが妻に発覚してそれが原因で夫婦関係が破綻した、裏オプで性行為を繰り返し「彼氏だと思っている」というメッセージを送ったなどです。。
既婚男性がホテヘルを利用し、男性客の妻が風俗嬢に対して慰謝料請求した事案。男性客は当該ホテヘルを2回利用し、本番(性行為)をした。
そして,風俗店の従業員と利用客との間で性交渉が行われることが,直ちに利用客とその配偶者との婚姻共同生活の平和を害するものとは解し難く,仮に,婚姻共同生活の平和を害することがあるとしても,その程度は客観的にみて軽微であるということができる。
そうすると,仮に,被告とAとの間でなされた本件性的サービスの際の性交渉が,原告の婚姻共同生活の平和の維持を侵害し,不貞行為に当たり得る面があるとしても,それにより,原告に,金銭の支払によらなければ慰藉されないほどの精神的苦痛が生じたものと認めるに足りない。
この点,原告は,本件店舗が本来は性交渉を提供していない業態であるにもかかわらず,被告がAと性交渉に至ったとの点が原告の権利を侵害するものであり,その違法性を肯定しないことは,売春行為が適法であることを認めることになるなどと主張する。しかしながら,本件店舗の業態を考慮しても,既に説示したとおり,被告とAとの関係が,本件店舗の従業員と利用客の関係を超えるものではないことからすれば,原告に対する違法性を具備するかという観点においては,本件性的サービスの際の性交渉も,業務の一環又はその延長としてなされたと評価し得るというべきである。Aと被告との間の性交渉が売春防止法等の法令上違法とされる可能性があることと,これが原告個人の権利を侵害するか否かということは別問題であり,原告の主張は採用できない。
夫がヘルスとピンサロのポイントカード、ソープのポイントカードなどを所持していたが、ピンサロ利用1回だけを認めている事案。
また,被告が利用した上記ピンクサロンが性的なサービスを提供する風俗店であることは被告本人も認めるところであるが(被告本人尋問),被告が実際に同ピンクサロンで性的サービスを受けたかどうか,受けたとしてそのサービスの内容がどのようなものであったかについては,これを認めるに足りる的確な証拠がない。
したがって,被告が風俗店を利用した事実は,上記の限度で認められるものの,これをもって被告に不貞行為があったとは認められず,婚姻を継続し難い重大な事由に当たるとも直ちには認めることができない。
既婚者男性がクラブのママと性行為(ママの枕営業)をしていた事例で、男性の妻がクラブのママに対して慰謝料請求をしていた事例。
ソープランドに勤務する女性のような売春婦が対価を得て妻のある顧客と性交渉を行った場合には、当該性交渉は当該顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害するものでない。
クラブのママないしホステスが、顧客と性交渉を反復・継続していたとしても、それが『枕営業』であると認められる場合には、売春婦の場合と同様に、顧客の性欲処理に商売として応じたにすぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから、そのことを知った妻が精神的苦痛を受けたとしても、当該妻に対する関係で、不法行為を構成するものではないと解するのが相当
既婚者であるデリヘルの男性客が、生まれてくる子供の成長を記録するために購入したカメラでプレイを撮影しており、妻がそれを発見し、その後夫婦関係が悪化した。妻が夫に対して慰謝料請求をした事案。
平成20年,原告の妊娠が判明し,被告は,出産の状況や生まれてくる子(長女A)の成長を記録するためにビデオカメラを購入した。
被告は,同年10月21日及び同年11月2日の各日,ホテルにおいて,いわゆるデリバリーヘルスの女性従業員から口淫等の性的サービスを受け(以下「本件不貞行為」という。),上記ビデオカメラを用いてその様子を録画した(甲4,5)。
原告は,平成21年3月頃,上記録画を発見し,本件不貞行為を知った(甲5)。原告が被告に対し本件不貞行為の経緯等を尋ねると,被告は,勤務先から出産祝い金を受け取ったので,それを利用して性的サービスを受けた旨回答した。原告と被告の婚姻関係は,本件不貞行為によって円満さを欠き始め,性交渉の持ち方,住居の場所等及び借金の返済方法等に関する原告と被告の考え方の違い等によって悪化していき,平成26年5月頃に破たんしたと認められる。
以上のとおり,本件不貞行為は,婚姻関係破たんに少なからぬ影響を与えたといえ,そうすると,被告には婚姻関係破たんについて責めに帰すべき事由があったというべきである。なお,被告は,本件不貞行為は,手淫及び口淫に過ぎず,男性器を女性器に挿入するものではないと主張するが,当該主張は,上記判断を左右するものではない。上記1において認定説示したところに照らすと,原告と被告の婚姻関係は,被告の責めに帰すべき事由により破たんしたといえ,被告は,原告に対し,原告と被告の婚姻関係が破たんしたことについて,不法行為に基づく損害賠償責任を負うというべきである。
しかし,上記1において認定説示したところに照らすと,婚姻関係破たんについて被告の責めに帰すべき程度は大きなものではないともいうべきである。このこと及び本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると,婚姻関係破たんにより原告が被った精神的苦痛を慰謝するために必要な金額は30万円であると認めるのが相当である。
男性客がJKリフレで1回5万円を払って裏オプで本番(性行為)を約10回した事例。男性の妻がリフレ嬢に対して慰謝料請求をした。リフレ嬢が男性客に「彼氏だと思っている」とメッセージを送った。
(1) 上記認定事実記載のとおり、被告はAとの間で、令和3年1月頃から5月頃にかけて、約10回継続的に性交渉を持っている。被告とAとの関係は、JKリフレの利用を介してのものであって、被告は、JKリフレの従業員の給与体系上、通常のサービスだけではほとんど稼ぎはなく、裏オプションを行ってその料金を得ることがほぼ必須であったと主張するものの、仮にそうであったとしても、裏オプションを利用するかどうかは、最終的には利用客と従業員との交渉によって定まるものと解され、JKリフレの従業員が利用客と性交渉を持つことが当然の前提になっていたとまでは認めがたい。
(2) その上で、被告は、Aが既婚者であることを知り、その上でAとの性交渉に応じている。たしかに、被告とAとの性交渉は全て、JKリフレの裏オプションとしての料金を支払った上でのものではあり、その関係は主として利用客と従業員というものにとどまっていたものとは解されるものの、被告からAに対し、上記認定事実(4)記載のような、「彼氏だと思っている」などと恋愛感情を示すようなやりとりをしていることなども含めて考えると、たとえ被告の内心がAによる利用を促すための営業行為であったとしても、その態様として、原告とAとの夫婦共同生活の平和を害さないものとまでは認めがたく、不法行為自体の成立は否定されない。
(3) ただし、被告とAの関係が従業員と利用客という関係を主とするものであることなどの上記の事情は、婚姻共同生活の平和を害する程度としては一般的な不貞行為に比して相対的に低いものというべきであり、上記の被告とAとの性交渉の頻度や態様に加え、原告とAが現時点において離婚には至っていないことなど、本件に現れた一切の事情を考慮すれば、原告の慰謝料の額は60万円が相当であり、相当因果関係を有する弁護士費用としては6万円が相当である。
ソープランドの男性客の妻がソープ嬢に対して慰謝料請求をした事案。ソープ嬢がソープを辞めた後も個人的にあって金を渡して性交渉をしており、店内でのサービスの不倫を否定し、辞めた後の性交渉について不倫を認めた事例。
被告は,Aが婚姻していることを知りながらAと肉体関係を継続的に持っていた事実が認められるが,そのうち平成25年10月までのものは,性的サービスの提供を業務とする本件店舗において,利用客であるAが対価を支払うことにより従業員である被告が肉体関係に応じたものであると認められ,それ自体が直ちに婚姻共同生活の平和を害するものではないから,これが原因で原告とAとの夫婦関係が悪化したとしても,被告が故意又は過失によってこれに寄与したものとは認め難いというべきである。
同月以降に被告がAと持った肉体関係は,本件店舗外におけるものであることが認められるところ,Aは,単に性的欲求の処理にとどまらず被告に好意を持っていたからこそ,本件店舗の他の従業員ではなく,被告との本件店舗外での肉体関係の継続を求めたものであり,被告もこれを認識し又は容易に認識できたのにAの求めに応じていたものと認められるから,被告が自らは専ら対価を得る目的でAとの肉体関係を持ったとしても,これが原告とAの夫婦関係に悪影響を及ぼすだけでなく,原告との婚姻共同生活の平和を害し,原告の妻としての権利を侵害することになることを十分認識していたものと認めるのが相当である。
そうすると,被告が同月以降に本件店舗外においてAと肉体関係を持ったことは違法性を帯び,不法行為に該当するものというべきであり,被告が対価を得て行っていた職務であって不貞行為に該当しないとする被告の主張は採用できない。

風俗利用については、原則は、不倫・不貞に該当せず、離婚や損害賠償請求の対象にならないと考えられます。
ただ、以下のような場合には不倫・不貞と認められる可能性があります。
・店外で会っていた場合
・風俗のキャストと客以上の関係が推認されるようなメッセージのやり取りがあるような場合
・夫婦関係を破綻させるような悪質な行為
風俗の不倫・不貞と離婚や慰謝料についてのご相談はグラディアトル法律事務所にご連絡ください。
