「キャバクラで働いているけど残業代が支払われない……」
「キャバクラやガールズバーで残業代を請求できるのはどのようなケース?」
「残業代請求が可能ならこれまでの残業代を請求したい!」
キャバクラやガールズバーに勤務するホステスやスタッフであっても、一定の条件を満たせば労働者としての権利を持ち、残業代を請求することが可能である。
しかし、実際の現場では「業務委託契約だから残業代は発生しない」といった説明で、支払われるべき賃金が支給されていない実態が多数存在する。店側の説明を鵜呑みにせず、まずは専門家である弁護士に相談して、残業代請求が可能であるかどうかを判断してもらうとよいだろう。
逆にキャバクラの経営者においても、多額の請求がなされるリスクがあるので、キャバ嬢の労働者性や残業代請求については理解をしておくと良いだろう。
詳細は、本文で解説をするが、実際に、キャバクラキャストだった女性の労働者性を認められ、未払い残業代など約2000万円の支払いが命じられた裁判例もある。
本記事では、
| ・キャバクラやガールズバーで働く人の「労働者性」の判断基準 ・キャバクラやガールズバーで残業代が高額になりやすい理由 ・キャバクラやガールズバーに対して未払い残業代を請求する手順 |
などについて詳しく説明する。
残業代を請求すべきか迷っている方や今の契約内容に疑問を感じている方にとって、有益な内容となっているため、最後までお読みいただきたい。
キャバクラやガールズバーに勤務する者は、たとえ業務委託契約や個人事業主扱いであったとしても、実態として労働者性が認められれば、労働基準法上の「労働者」として残業代を請求することができる。
労働者性は形式的な契約の名称ではなく、実際の勤務実態に基づいて判断される。主な判断基準は、以下のとおりである。
| ・仕事の依頼に対して断る自由があるか |
| ・勤務時間やシフトが事業主により管理されているか |
| ・業務の進め方を細かく指示されているか |
| ・他の人に仕事を代行させたり、手伝わせたりできるか |
| ・報酬が出来高ではなく時間給や日給で支払われているか |
たとえば「出勤しないと罰金が科される」「遅刻に対してペナルティがある」「接客内容まで細かく指示される」などがある場合は、労働者性が強く認められやすい。
店側からは「業務委託だから残業代は支払わない」という主張がなされることが多い。しかし、このような主張は、法的には通用しない。
残業代の支払いが必要であるかは、あくまでも実態に即して判断されるため、形式上業務委託であっても、労働者として認められれば残業代請求は可能である。
以降の章では、キャバクラ・ガールズバーで働く人に労働者性が認められることを前提に、キャバクラ・ガールズバーにおける残業代請求について詳しく解説する。

キャバクラ・ガールズバーにおいて未払い残業代が高額化しやすい背景には、ナイトビジネス業界特有の労働環境がある。以下では、その主な理由を説明する。
労働基準法では、午後10時から翌午前5時までの労働には25%以上の割増賃金(深夜割増手当)を支払うことが義務付けられている。
風俗営業許可が必要なキャバクラは、風営法により深夜営業(午前0時から午前6時)が禁止されているため、深夜手当が発生してもわずかであるが、接待を伴わないガールズバーであれば深夜営業が可能であるため、通常の残業代よりも高額になりやすい。
しかし、実際には「時給○○円で深夜も変わらない」とされるケースが多く、本来支払われるべき深夜手当が不当に省かれている。これにより、本来の賃金と実際の支払額との乖離が大きくなり、未払い残業代が高額になる原因となる。
ナイトワークでは、「遅刻したら罰金1万円」「ドリンクバックが少ないと控除」など、従業員に対する不合理なペナルティが横行している場合がある。
これらの罰金や控除は、労働基準法24条の全額払いの原則に違反する可能性が高く、違法とされるケースも多い。
違法な控除がある場合、労働者は本来受け取るべき賃金の全額を請求でき、これも残業代請求の金額を押し上げる要因となる。
キャバクラやガールズバーでは、地域にもよるが高時給が設定されていることが多く、5000円〜1万円という高時給のキャストもいる。
この高額時給がそのまま残業代や深夜手当の算定基礎となるため、未払い残業代を計算すると総額が数百万円を超えるケースも珍しくない。

実際にキャバクラキャストだった女性が労働者性を認められ、未払い残業代など約2000万円の支払いが命じられた裁判例が存在する。
2024年に報道された東京地裁の判決(参照:Yahooニュース)では、元キャバクラ勤務の女性が労働者としての地位を争い、約2000万円の賃金支払いが命じられた。
判決のポイントは以下のとおりである。
| ・出勤日や時間が店側により決定されていた ・接客内容や立ち位置に関する指示があった ・時給制であったが深夜手当が支払われていなかった |
これらの要素をもって、裁判所は「実態として雇用契約に該当する」と判断し、労働者性を認定したのである。
このような判例は、同様の環境で働いている者にとって、残業代請求の強力な後押しとなるだろう。

キャバクラ・ガールズバーでの未払い残業代を請求するためには、いきなり店に要求を突きつけるのではなく、証拠収集から法的手続まで段階的に進める必要がある。以下では、実際の手順を5つのステップに分けて説明する。
まずもっとも重要なのが残業した事実や働いた時間、賃金の支払状況などを裏付ける証拠の収集である。
たとえば、以下のようなものが証拠として有効だ。
| ・出勤記録やシフト表 ・LINEでのシフト連絡 ・タイムカード ・日報 ・売上管理表 ・給与明細 ・銀行振込記録 |
また、店長や従業員とのやりとりの中で「今日はラストまでありがとね」「遅刻罰金は1万円ね」といった文言があれば、それも重要な証拠になる。スクリーンショットや録音などで保存しておくとよい。
なお、これらの証拠がないからといって諦める必要はない。手帳に出勤日や勤務時間をメモしておく、LINEでの連絡を活用するなど自分なりの記録を積み重ねることが後に大きな武器となるため、是非実践してもらいたい。
証拠が揃ったら、次は実際に請求する未払い残業代の金額を計算する。
一般的には、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた時間について25%の割増、深夜労働(午後10時~午前5時)についても25%の割増、これらが重なる場合は50%の割増で計算することになる。
ただし、計算には正確な時給や勤務時間の把握が不可欠である。自力での計算が難しい場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談して計算してもらうと安心である。
未払い額を確定したら、いよいよ店舗側に対して請求を行う。
この際、口頭ではなく「内容証明郵便」などの書面で請求するのが基本である。書面で請求することにより、証拠として残すことができ、時効の完成を阻止するためにも有効となる。
なお、請求書には未払いの期間・金額・支払いを求める期日を明記するのが一般的である。可能であれば、弁護士名義で送付することにより、店舗側の対応も変わってくる可能性がある。
請求後、店舗側がすぐに支払いに応じるケースは多くない。
特にキャバクラやガールズバーでは、「うちは業務委託だから関係ない」といった主張をしてくることが多い。
こうした場面では冷静に交渉を進める必要があるが、従業員本人が店長や経営者と直接やり取りを行うのは精神的にも負担が大きい。自分ひとりで対応するのが難しいと感じるときは、早めに弁護士に相談すべきである。
弁護士に依頼すれば弁護士が代理人となって交渉に臨むため、それにより相手の態度が一変すし、スムーズな和解が期待できるケースも少なくない。
交渉が決裂した場合には、法的手続に移行する。早期かつ柔軟な解決を希望するなら「労働審判」の申立てがおすすめである。
労働審判は、裁判所を通じた簡易・迅速な紛争解決手段であり、訴訟に比べて早期かつ柔軟な解決が可能であるのが特徴だ。
労働審判でも解決しない場合は、正式に訴訟(裁判)に移ることになるが、残業代請求は法的に認められやすく、証拠が整っていれば十分に勝訴の可能性はある。

キャバクラ・ガールズバーに対して未払い残業代を請求するにあたり、弁護士に相談することは非常に有効である。特に、ナイトワーク特有の契約形態や業界慣行に精通した弁護士であれば、より実態に即したアドバイスとサポートが受けられる。ここでは、弁護士に相談する3つの主なメリットを説明する。
キャバクラやガールズバーでは、名目上「業務委託契約」「個人事業主」とされているケースが多い。しかし、形式ではなく実態に基づいて「労働者性」があるかどうかを判断するのが基本である。
弁護士に相談すれば、勤務時間の拘束状況、報酬体系、店からの指示内容、罰則の有無などを総合的に確認したうえで、「労働者」に該当するかどうかを適切に判断してくれる。
また、「過去の勤務分にも請求できるのか」「退職してしまっていても可能か」といった疑問にも、弁護士は法的観点から具体的に回答してくれる。
自己判断であきらめてしまう前に、一度相談してみる価値は十分にあるといえるだろう。
未払い残業代を請求する際、もっともストレスになるのが店舗側との直接交渉である。
特に夜の業界では、「うちはそんなの通用しない」「辞めたやつが今さら何言ってんだ」と高圧的な対応をされるケースもある。
弁護士に依頼すれば、相手とのやりとりはすべて代理人である弁護士が対応するため、精神的な負担が大きく軽減される。相手も弁護士が入った時点で「本気だ」と認識し、適当にあしらうことが難しくなる。
実際、弁護士からの内容証明郵便に対しては、それまで無視していた店舗が態度を変え、示談に応じるケースも少なくない。
交渉が決裂した場合、労働審判や訴訟に進む選択肢がある。これらの手続は法的な知識と経験が求められるため、本人だけで対応するのは極めて困難である。
その点、最初から弁護士に依頼しておけば、交渉から法的手続まで一貫して対応してもらえるため、手続上の無駄やリスクを最小限に抑えることができる。
また、労働審判や訴訟では、法律的な主張だけでなく、証拠の整理や裁判官への説明(主張)の仕方も結果を大きく左右する。風俗業界の労働問題を扱った経験がある弁護士であれば、業界特有の事情を的確に主張・立証することができ、より有利に展開することが期待できる。

キャバクラやガールズバーにおける未払い残業代の問題は、決して一部の店舗に限った特殊な事例ではない。多くの現場で、当然支払われるべき賃金が支払われておらず、従業員が泣き寝入りを余儀なくされている実態がある。
しかし、法律はキャバクラ・ガールズバーで働く方にも平等に適用される。実態として労働者性が認められれば、形式的な契約形態に関係なく残業代を請求することが可能である。
そして、その正当な権利を実現するためには、風俗業界に詳しい弁護士のサポートが極めて重要である。
グラディアトル法律事務所では、キャバクラ・ガールズバーなどのナイトワーク従事者の労働問題に多数の対応実績がある。証拠の集め方から残業代の計算、店舗側との交渉、労働審判・訴訟対応まで、一貫してサポートする体制を整えているため、キャバクラやガールズバーへの残業代請求を検討中の方は、是非当事務所まで相談してもらいたい。
相談は完全予約制で、LINE・電話・メールのいずれでも受付可能である。また、初回相談は無料であり、秘密厳守で対応するため、職場に知られる心配もない。
「弁護士に相談するのは緊張する」「費用が高そう」と不安を抱く方も、まずは一度、話を聞いてみるだけでも構わない。専門家に現状を伝えることで、自身の置かれている状況や可能な対応策が見えてくるはずだ。
キャバクラ・ガールズバーの従業員であっても、労働者性が認められれば残業代を請求することができる。実際に約2000万円の未払い賃金が認められた裁判例も存在しており、キャバクラ・ガールズバーの残業代請求は決して夢物語ではない。
しかし、そのためにはナイトビジネス業界の労働問題に精通した弁護士のサポートが不可欠である。自力での対応が難しいと感じた場合は、グラディアトル法律事務所まで相談してほしい。
