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キャバクラの風紀違反の罰金は違法無効の裁判例を弁護士が解説!

弁護士 若林翔 2023/08/24更新

2020年10月19日,キャバクラの風紀違反の罰金についての興味深い裁判例がでた。

大阪府のキャバクラ店では,女性キャストとの雇用契約時に,風紀違反の違約金200万との同意書を書かせていた。

そして,実際に風紀違反をした女性キャストに対して160万円を請求したのだ。

この事件について,解説していく。

なお判決文も公開されたので詳細について追記した。

風紀違反とは?

一般の方には馴染みの薄い言葉かもしれない。

キャバクラ・ガールズバーなどの水商売や,デリヘル等の風俗店など,夜職関係者には馴染みのある言葉だろう。

風紀違反とは,水商売・風俗店などで女性キャストと男性スタッフが私的な交際・恋愛をすることをいう。

多くの店では,風紀違反が禁じられており,罰金が設けられている。

罰金,法的には刑事罰としての罰金を指すが,この場合に使われる罰金は,違約金・損害賠償金という意味合いで使われる。

風紀違反を禁じている理由は,水商売や風俗にとって,女性キャストやそのサービスはお店の商品という考え方があり,商品に手をつけるのはご法度だという考え方がある。

お客さんが,自分が指名している女性キャストが男性スタッフと付き合っていたら,興醒めしてしまう。

また,新規客を誰に担当させるかという付け回しの権限を持っている男性スタッフが風紀対象の女性を優遇してしまうなど,女性キャスト間の不公平につながるという理由もある。

キャバクラの風紀違反(私的交際禁止)の無効判決ニュース

キャバクラ店が私的交際禁止の雇用契約、地裁が無効判決…「交際は本人の意思尊重」

私的な男女交際を禁じた雇用契約に反して男性と交際したとして、大阪府内のキャバクラ店の元従業員女性に、店の経営会社などが140万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が19日、大阪地裁であり、後藤誠裁判官は「交際は本人の意思が尊重される」とし、店側の請求を棄却した。

判決によると、店は2017年に元従業員女性と雇用契約を締結し、この時、私的交際をすれば違約金200万円を払うとする同意書に署名をさせた。18年にこの女性と系列店に勤める男性との交際が発覚し、店側は「2人で出歩くのを客に見られ、店の売り上げが減った」と主張していた。

判決で後藤裁判官は「真摯(しんし)な交際も禁じており、自由への介入が著しく、無効」とし、あらかじめ違約金の規定を盛り込んだ契約も労働基準法に違反していると指摘した。

店側は取材に「納得できない部分があり、控訴も検討したい」としている。

讀賣新聞オンライン 2020/10/20 10:42 より引用

https://www.yomiuri.co.jp/national/20201020-OYT1T50065/

風紀違反と公序良俗違反

まず,この判例は,風紀違反の規定について,「真摯(しんし)な交際も禁じており、自由への介入が著しく、無効」だと判断している。

おそらく,この無効の根拠は公序良俗違反(民法90条)であると考えられる。

民法(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

裁判例をまだ読めていないので,詳細はまだ分からないが,「真摯(しんし)な交際も禁じており、自由への介入が著しく、無効」とのことだ。

そうすると,この裁判例では,一般的に全ての風紀違反の条項が違法無効であると判断したわけではなさそうだ。

真摯(しんし)な交際,すなわち,真面目な交際,真剣交際をも禁止の対象にしている点で,交際をする本人の意思・自由を侵害しており,公序良俗に反すると判断をしているのだろう。

キャバクラ等水商売での罰金は違法か?労働基準法との関係

風紀違反に限らず,キャバクラやホストクラブ等の水商売では罰金のルールが規定されていることが多い。

罰金規定は違法なのだろうか?

労働基準法16条の賠償予定の禁止との関係で問題となる。

労働基準法(賠償予定の禁止)
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

まず,労働基準法は,労働契約をした労働者に適用される。

「労働者性」と呼ばれる論点だ。

キャバクラやホストクラブなどの水商売のキャストの場合においては,雇用された労働者なのか,それとも,業務委託をされた業務受託者・個人事業主なのかという点が問題となる。

労働基準法(定義)
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労働者かどうかは,契約書の記載内容だけから判断されるのではなく,働き方の実態について,以下の要素などを総合考慮して判断される。

  • 時間的・場所的な拘束があるか
    →勤務時間の自由があるか,働く場所は固定されているか
  • 業務の内容・遂行方法に対する指揮命令の有無,裁量の程度
  • 業務に代替性があるか
  • 業務に必要なものは誰が負担するのか
  • 報酬は源泉徴収されているのか
  • 契約書や給与明細等の形式面はどうなっているか

ホスト,ホステスの労働者性については,いくつかの判例があり,その判断は分かれているところだ。

具体的には,以下の記事を参照してほしい。

ホスト・ホステスの労働者性!ホストクラブ・キャバクラ・風俗での残業代・解雇について

本件では雇用契約だと認定されているため,あらかじめ違約金を定めた規定は労働基準法16条違反で無効だとの判断がなされている。

もっとも,原告であるキャバクラの経営者側に弁護士がついているのであれば,雇用契約がなされた労働者であるとすれば,労働基準法16条違反になってしまうことから,労働者性を否定する主張をしていたのではないかと思われるが,その辺りは判決文を見てみないことには。。。

追記:キャバクラの風紀違反条項は公序良俗違反で無効の裁判例!

上記ニュースの裁判例が公開されたので,追記する。

まずは、裁判例を見てみよう。

大阪地判令和2年10月19日

(1)請求原因(1),同(2)のうち原告と被告が雇用契約を締結したこと(甲3)及び原告の求めにより被告が本件同意書(甲4)に署名したこと,同(3),同(4)のうち被告が本件始末書(甲5)を作成したこと及びその時点で原告が被告に対する違約金200万円の請求を控えたことは当事者間に争いがない。

(2)しかるに,本件同意書は,使用者である原告が被用者である被告に対して私的交際を禁止し,これに違反した場合には違約金200万円を請求し,被告はこれを支払う旨合意するものであるところ,これは,労働契約の不履行について違約金を定めたり,損害賠償額を予定する契約をしたりすることを禁じた労働基準法16条に違反しており,無効である。

また,人が交際するかどうか,誰と交際するかはその人の自由に決せられるべき事柄であって,その人の意思が最大限尊重されなければならないところ,本件同意書は,禁止する交際について交際相手以外に限定する文言を置いておらず真摯な交際までも禁止対象に含んでいることや,その私的交際に対して200万円もの高額な違約金を定めている点において,被用者の自由ないし意思に対する介入が著しいといえるから,公序良俗に反し,無効というべきである。

この裁判例の事例においては,前述した労働者性は争いになっておらず,雇用契約を締結していた。

そのため,労働基準法16条に違反し,無効であると判断されている。

また,風紀違反について違約金を定めた規定については,公序良俗違反で無効とされている。

その理由づけは詳しく書かれておらず,前述したニュース記事の内容とほとんど変わらない記載だ。「交際相手以外に限定する文言を置いていない」ことを真摯な交際をも対象に含むものだという解釈の理由づけにしている。

他に本命の恋人がいるのに遊びで店内のキャスト・スタッフに手を出すことを禁止するならまだしも…といったところだろうか。

本件については,店側が控訴も検討しているというが…

公序良俗の部分は争う余地があるとしても,雇用契約を締結しており,労働者性について争いがない以上,違約金条項を理由にした損害賠償請求が認められるのは難しそうだ。

キャバクラと風紀違反罰金まとめ

以上のように,キャバクラ等の水商売で見られる風紀違反の罰金規定だが,違法・無効と判断される場合がある。

まず,キャバ嬢との間の契約や,黒服・男性スタッフとの間の契約が雇用契約で,労働者性があると認定された場合には,あらかじめ損害賠償額を予定する違約金条項を定めていたとしても,労働基準法16条違反で無効となる。

次に,労働者性が否定された場合や,事後的に損害賠償請求をする場合には,公序良俗違反の問題となる。

本件の大阪地裁は,真摯な交際をも禁止する風紀違反の規定は公序良俗に違反し無効だと判断をしている。

そのため,風紀違反についての規定を設けるとしても,働き方の実態も含めて労働者性が否定されるような契約内容にしておき,真摯な交際をも規定するような規定にしないようにしないと,なかなか風紀違反規定は有効にならないのではないかと考えられる。

キャバクラ等の水商売や,風俗店の経営者には,是非ともこの裁判例を知っておいてほしい

他方で,キャバクラ等の水商売で勤務している人で,辞めたくても辞められないと困っている人がいれば,弁護士による退職代行の利用も検討してほしい。

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弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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