脅迫罪・恐喝罪で被害届・刑事告訴状を受理させる方法を弁護士が解説!

当法律事務所では、脅迫や恐喝の被害にあっているという弁護士への相談事案が増えてきています。

  • 出会い系サイトで会った人から脅されている
  • パパ活相手から恐喝されている
  • 美人局(つつもたせ)の被害にあってしまった
  • 勤務先の上司・社長から多額の違約金を請求されている
  • 風俗トラブルをきっかけに恐喝されている
  • 元交際相手から裸の写真をばらまくと脅されている(リベンジポルノ)

このような脅迫や恐喝の被害にあって困っている方が大勢います。

弁護士に相談したり、警察に被害届を提出したり、刑事告訴をしたりすると加害者から報復をされてしまうのではないかと恐れて、言いなりになり、要求されるがままにお金を渡してしまうケースもあります。

しかし、脅迫・恐喝をしてくる加害者は、被害者が無抵抗に加害者の要望に従っていると、つけ上がり、何度も何度も脅迫・恐喝をして、被害者をしゃぶりつくします

被害者側としては、早期かつ適切な対応をしていく必要があります。

脅迫や恐喝の被害に困っている状況で、ご自身で加害者からの要求を跳ね除けるのは非常に難しいと思いますので、弁護士や警察に相談して、適切な対応をしていくことが重要になります。

しかし、警察に相談に行ったのに警察が動いてくれない。被害届を出したいのに受理してもらえない刑事告訴をしたいのに告訴状を受理してもらえない。といったケースが多いのが現状です。

そこで、この記事では、脅迫罪・恐喝罪について説明するとともに、被害届や刑事告訴を受理してもらい脅迫・恐喝の被害を止める方法について弁護士が解説をしていきます。

脅迫罪・恐喝罪とは?構成要件等解説

脅迫罪について

脅迫罪は、人を脅して怖がらせる犯罪であって、個人の意思の自由を保護法益とする犯罪です。

構成要件とは、犯罪が成立する基本的な要件のことをいいます。犯罪成立要件には構成要件のほか、違法性阻却事由がないことや責任能力があることなどが必要ですが、各犯罪類型ごとの基本的な犯罪成立要件が構成要件です。

脅迫罪の構成要件は、人の生命、身体、自由、名誉又は財産に対して、畏怖させるに足りる程度の害悪を告知することです。

脅迫罪では、害悪の告知という脅迫行為によって、被害者が現実に畏怖したことは犯罪成立要件にはなっていません(危険犯)。客観的にみて、当該行為が人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知であるといえれば、脅迫罪は成立します。

脅迫罪における害悪の告知の程度(脅迫の強弱の程度)は、人を畏怖させる(怖がらせる)に足りる程度のものであることが必要であり、不快感や漠然とした不安感を感じさせる程度のものでは足りないと考えられています。

この害悪の告知の程度は、以下のような事情を踏まえて総合的に判断されることになります。

  • 告知内容
  • 告知の日時・場所・方法
  • 告知者と相手の年齢・体格・職業等
  • 告知者と相手の関係
  • 告知時のその場の状況
  • 告知に至った経緯

脅迫罪の罰則は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金になります。

(脅迫)
第二百二十二条
 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

刑法

恐喝罪について

恐喝罪は、暴行や脅迫によって人を畏怖させて、財物や財産上の利益を交付させる犯罪であって、被害者の財産及び意思決定や行動の自由を保護法益とする犯罪です。

恐喝罪の構成要件は、人の反抗を抑圧させない程度の暴行・脅迫によって、人を畏怖させ、財産・利益を交付させることです。

恐喝罪での暴行・脅迫は、人の反抗を抑圧させない程度のものに限られております。これは、人の犯行を抑圧させるものについては、恐喝罪ではなく、強盗罪に該当するからです。

恐喝罪での脅迫は、人を畏怖させる程度の害悪の告知であるという点では脅迫罪と同様です。

しかし、恐喝罪の場合には、脅迫罪と異なり、害悪の告知の対象に限定がありません。脅迫罪では、人の生命、身体、自由、名誉又は財産に対する害悪の告知というように、対象に限定がありましたが、恐喝罪の脅迫にはこれがないのです。

具体的には、犯罪事実を警察に申告するというものや、秘密をバラすと告知することなども対象となるとされております。

恐喝罪の罰則は、10年以下の懲役となり、脅迫罪よりも重いものとなっております。

(恐喝)
第二百四十九条
 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法

なお、脅迫罪・恐喝罪については、以下の記事もご参照ください。

被害届と刑事告訴の違い

被害届とは、犯罪被害にあった事実を捜査機関に届け出ることをいいます。

刑事告訴とは、被害者その他法律上告訴権がある者が検察官または司法警察員に対し、犯罪事実について犯人の処罰を求める旨の意思表示をすること(最判昭和26.7.12参照)をいいます。

刑事告訴は、犯人の処罰を求める意思表示であるという点で、被害届とは異なります。

また、刑事告訴では、被害届とは異なり、告訴状を受理した警察・検察などの捜査機関に様々な義務が課されます

具体的には、告訴を受けた警察官は速やかに書類及び証拠物を検察官に送付しなければならず(刑事訴訟法242条)、検察官は起訴・不起訴の処分を行った場合には告訴人に通知しなければならず(同法260条)、不起訴処分にした場合には告訴人から請求があれば速やかに処分の理由を告げなければならない(同法261条)などです。

第二百三十条 犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。

第二百四十一条 告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。
○2 検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。

第二百四十二条 司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。

第二百六十条 検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない。公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。

第二百六十一条 検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人にその理由を告げなければならない。

刑事訴訟法

脅迫・恐喝の被害届・刑事告訴の期限は?いつまでに提出?

脅迫・恐喝の被害にあい、被害届や刑事告訴状を提出したい場合、いつまでに提出すればよいのでしょうか?

提出期限はあるのでしょうか?

まず、被害届について、提出期限の定めはありません

また、刑事告訴について、親告罪(告訴がなければ起訴ができない犯罪)では、犯人を知った日から6ヶ月という告訴期間が定められています。もっとも、脅迫罪も恐喝罪も親告罪ではありませんので、告訴についての期限はありません

このように、被害届にも刑事告訴にも、いつまでに提出をしなければならないという期限はありません。

しかし、犯罪には、時効があります。

公訴時効といって、その期間をすぎると起訴できなくなります。この時効期間を過ぎてしまった犯罪については起訴をして処罰を求めることができませんので、被害届・刑事告訴もできなくなります。

脅迫罪の時効は3年、恐喝罪の時効は7年です。

第二百五十条 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
二 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
三 前二号に掲げる罪以外の罪については十年
② 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年

刑事訴訟法

以上のように、脅迫・恐喝の被害届や刑事告訴において、いつまでに提出しなければならいかという期限については、公訴時効期間が期限になるといえます。

もっとも、被害にあってから長期間が経過してしまうと、犯罪の証拠が散逸してしまうことなどから、脅迫罪・恐喝罪の立証が難しくなります。

また、被害から長期間が経過した事件については、警察が消極的になりやすい傾向もありますので、できる限り早期に対応をすべきでしょう。

脅迫・恐喝で被害届・刑事告訴をするメリットは?

脅迫・恐喝被害にあってしまった場合に、被害届や刑事告訴をするメリットはどんなところにあるのでしょうか?

前述したように、被害届は犯罪被害の申告で、刑事告訴はこれに加えて犯人の処罰を求めるものです。そして、被害届や刑事告訴は、捜査の端緒といって、警察が捜査を開始するきっかけになります。

警察が捜査を開始すると、犯人に対して警察が呼び出しをして取調べを行なったり、犯人が逮捕されたり、犯人の家や職場にガサと言われる捜索がなされたりします。

このように警察の捜査の手が脅迫犯や恐喝犯に及ぶことにより、犯人による脅迫被害や恐喝被害が止まる可能性が高まります。加害者である犯人としても、逮捕されたり、刑事処罰を受けることを嫌がるからです。

また、捜査が進展し、犯人が起訴されれば、懲役刑や罰金刑といった刑事処罰を受けることになります。

以上のような捜査の過程の中で、犯人である加害者から弁護士を通じて示談交渉の申し入れがあることも多いです。その示談交渉の中で、恐喝されて渡してしまった被害金の返金を求めたり、脅迫や恐喝により生じた慰謝料等の損害賠償を請求したりすることもできます。

まとめると、被害届・刑事告訴をすることにより、以下の3つのメリットが考えられます。

  1. 脅迫・恐喝被害を止める(ブロックする)
  2. 犯人に刑事処罰が課せられる
  3. 示談の過程で被害金の返金・慰謝料請求ができる

脅迫・恐喝で被害届・告訴状が受理されない理由は?警察は嫌がる?

脅迫や恐喝の被害を受けて、警察に被害届や告訴状を出しに行ったが、警察官が色々と難癖をつけて受理をしてくれないという相談も多いです。

なぜ、警察官は被害届や告訴状の受理を嫌がるのでしょうか?

いくつかの理由が考えられます。

まず、被害届や刑事告訴を受理してしまうと、犯罪発生件数としてカウントされてしまうということが挙げられます。

警察では毎年犯罪の発生件数を把握し、治安の悪化度合いを数値化しております。犯罪発生件数が増えてしまうと困るのです。さらに、犯罪発生件数が増えたにもかかわらず検挙して有罪にできた件数が少なければ、その警察署や警察官の評価にも関わってくるのでしょう。

次に、警察官が忙しく、事件対応を嫌がるということも考えられます。日々、さまざまな犯罪が発生していますから、現場の警察官も忙しいのでしょう。

また、犯罪の構成要件の捉え方や証拠収集が難しく、警察官としてはめんどくさいと感じるということも考えられます。特に、詐欺事件や横領事件のような経済事犯でよくみられます。警察官として、加害者のどの行為をどのように捉えて犯罪構成要件に当てはめればよいのか、その犯罪を立証するためにどのような証拠をどうやって確保していけばいいのかが分かりづらく、難しいとなると、警察官としては事件かを嫌がる傾向にあるように思います。

脅迫罪や恐喝罪においても、加害者の行為のどの部分が、被害者を畏怖させるに足りる害悪の告知にあたるのか、被害者の言動が脅迫や恐喝にあたるのかが難しい事案があり、そのような事案の場合には、被害届や告訴状の受理を嫌がる傾向にあるように思います。

このように、警察官は、被害届や刑事告訴を受けたくないと考え、さまざまな理由をつけて受理を拒んでくることがあります。

  • この事件はうちの警察署に管轄がない
  • 証拠が足りないので受理はできない

などの理由にならない理由をつけて、受理を拒んでくることが多いです。

法律上は被害届・告訴状の受理義務がある?

前述したように、警察官が被害届や告訴状を受理したくないと考え、受理を拒んでくることがあります。

では、法律上、被害届や告訴状について、受理をする義務はあるのでしょうか?言い換えれば、警察官は受理を拒むことはできるのでしょうか?

まず、行政手続法上、被害届や刑事告訴は、「届出」に該当します。

そして、届出は、形式的な記載事項や添付書類に不備がなければ、その届出が提出先に到達したときに効果が発生するものとされています。

そのため、被害届や告訴状についても、警察署に郵送で送るないしは、手渡した時点で効力が発生し、警察官は犯罪事件受理簿に登載し、告訴の場合には、速やかに書類等を検察官に送付しなければなりません

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

七 届出 行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう。

(届出)
第三十七条 届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。

行政手続法

また、警察官が犯罪の捜査を行うに当つて守るべき心構え、捜査の方法、手続その他捜査に関し必要な事項を定めている犯罪捜査規範では、被害届・刑事告訴を受理しなければならないと規定されています。

この受理義務については、当該事件が管轄区域外の事件であったとしても受理をしなければならないと定められています。そのため、管轄が違うから受理をしないなどの言い訳は犯罪捜査規範に照らせば許されないのです。

(被害届の受理)
第六十一条 警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない
2 前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届(別記様式第六号)に記入を求め又は警察官が代書するものとする。この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。

(犯罪事件受理簿)
第六十二条 犯罪事件を受理したときは、警察庁長官(以下「長官」という。)が定める様式の犯罪事件受理簿に登載しなければならない。

(告訴、告発および自首の受理)
第六十三条 司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない
2 司法巡査たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、直ちに、これを司法警察員たる警察官に移さなければならない。

犯罪捜査規範

以上のように、行政手続法上、被害届や告訴状は、提出によってその効力が生じ、受け取る側の警察官に受理を拒む権限はありません。また、犯罪捜査規範では、被害届も刑事告訴も受理をしなければならないと規定されており、明確に受理義務を規定しております。

そうであるにもかかわらず、現実では、警察官が被害届や刑事告訴の受理を拒む事例が後を断ちません。

警察庁もこの不受理問題について認識をしており、注意を促す通達を出しています。

具体的には、被害届や刑事告訴について、業務の多忙を理由に受理を拒む・先延ばしにする事例、他の警察署で処理した方がいいなどの理由をつけて受理を拒む事例、証拠や疎明資料の不十分を理由に受理を拒む事例があることを指摘しています。

その上で、警察庁は、被害に苦しみ犯人の処罰を求める国民の立場に立って、被害届や告訴状の受理について迅速かつ的確に対応し、原則として即時受理すべきであると、全国の警察に対して通達をしております。

迅速・確実な被害の届出の受理について

被害の届出の受理については、犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)第61条において、被害の届出をする者があったときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならないと規定されている。

しかし、近時、業務の多忙を理由に被害届の受理を先送りしたり、複数の都道府県警察に関係する事案に係る被害申告への対応が不十分なため重大な結果を招いた事案が発生するなど、被害の届出の受理をめぐり不適切な対応が見られるところである。

各都道府県警察にあっては、これらの事案を重く受け止め、被害者の要望に応える迅速・確実な被害の届出の受理がなされるよう、下記の事項について徹底を図られたい。

1 被害の届出の迅速・確実な受理
(1) 受理の原則 被害の届出に対しては、被害者・国民の立場に立って対応し、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、即時受理すること

被害届についての警察庁刑事局通達

告訴・告発の受理体制及び指導・管理の強化について

告訴・告発の相談をしても、疎明資料が十分にそろっていない他の警察署が主となって捜査した方が効率的であるなどの理由により、受理を保留したり、他所属を紹介して受理を拒む例があるなどの苦情が依然として寄せられている

被害に苦しみ犯人の処罰を求める国民にとって、警察は最後のよりどころであり、国民からの告訴・告発に迅速・的確に対応することは、警察に課せられた大きな責務である。

各都道府県警察においては、告訴・告発の的確な受理・処理の重要性を再度認識した上で、下記により、告訴・告発について、被害者・国民の立場に立った迅速・的確な対応を徹底されたい

告訴・告発についての警察庁刑事局通達

被害届・告訴状の書き方・書式

以上見てきたように、被害届や告訴状は、その形式に不備があったり、虚偽であることが明白であるような場合を除き、原則として、受理しなければならないものです。

では、形式に不備が無いように記載するためには、何を記載する必要があるのでしょうか?

まず、法律上は、被害届も刑事告訴も、書面のみならず口頭でもできるとされており、決まった書式によらなければならないものではありません。

もっとも、法律上の要件を満たす必要がありますので、以下の3点は必ず記載する必要があります。

  1. 犯罪事実
  2. 被害届提出者・刑事告訴人が誰か
  3. 犯人の処罰を求める旨(刑事告訴の場合)

被害届や刑事告訴は、犯罪被害にあったことの申告ですから、犯罪事実の記載が必要になります。具体的には、いつ、どこで、誰の、どのような行為が犯罪構成要件に該当するのかを記載する必要があります。

美人局の恐喝罪での告訴状の犯罪事実記載例でいえば、以下のような記載が望ましいです。

美人局の恐喝罪の告訴事実記載例

被告訴人Aは、告訴人B女と共謀の上、令和◯年◯月◯日午後◯時頃、東京都新宿区歌舞伎町〜所在の飲食店「◯◯」において、共犯者である被告訴人B女と告訴人が出会い系サイトを通じて出会い、情交関係を持ったことを種に告訴人から金員を喝取しようと企て、被告訴人に対して、「俺の女に手を出すとはどういうことや、誠意を見せろ。100万円払え。払えないなら、このことをお前の家族や会社にバラすし、痛い目見せて働けない顔にしてやるからな。」などと申し向けて金員を要求し、これに応じなければ被告訴人の名誉・身体に対する害悪が与えられるかもしれないと被告訴人を畏怖させ、もって、同人から現金100万円を交付させ、喝取したものである。

また、被害届や刑事告訴をする告訴人は、犯罪の被害者やその親権者などである必要がありますので、被害届の提出者や告訴人の氏名・住所・電話番号等を記載する必要があります。

加えて、刑事告訴については、犯罪被害にあった事実の申告に加えて、犯人の処罰を求める意思表示であるため、告訴人が犯人の処罰を求める旨を記載する必要があります。

以上に加えて、警察官の捜査をスムーズにし、警察が被害届や告訴状の受理をしやすいように、以下のような事実を記載し、証拠を添付しておくとより良いでしょう。

  • 犯人についての情報
  • 犯罪事実を立証するための証拠

脅迫や恐喝の加害者である犯人について、その氏名・住所・職業など、分かっている情報があれば、それを証明できるもの(犯人の免許証等の身分証など)と一緒に提出すると良いです。

犯人についての詳細な情報が分からないのであれば、犯人の情報をたどる糸口になるような情報を記載しましょう。例えば、犯人の電話番号が分かれば、携帯電話会社から契約者の情報を提出してもらうことによって犯人の住所等の情報が分かる可能性があります。

また、犯罪事実を立証する証拠を保有している場合には、証拠を提出しましょう。

脅迫や恐喝の証拠としては、以下のようなものが考えられます。

  • 脅されたときの録音・録画
  • 脅される前後のLINEやメールの履歴
  • 脅された直後に家族・友人等に相談した履歴
  • 恐喝されて渡したお金の領収書や振込履歴

これらを記載して、警察署に被害届や刑事告訴状を提出するのが良いでしょう。

被害届について、犯罪捜査規範61条2項に記載されている、別記様式第六号の書式を掲載しておきますので、ご参照ください。

被害届書式 犯罪捜査規範61条2項 別記様式第6号

脅迫・恐喝で被害届・刑事告訴状を受理させる方法

以上で見てきたように、原則、警察側に被害届や告訴状を受理しないという権限はなく、警察庁も、即時受理すべきと通達しております。にもかかわらず、警察に被害届や刑事告訴をしに行っても受理をしてもらえないというケースが多いのが実情です。

では、どうしたら警察に被害届や刑事告訴状を受理させられるのでしょうか?

以下の4つの方法が考えられます。

  1. 具体的かつ的確に犯罪事実を記載し・証拠資料を添付する
  2. 被害届・刑事告訴の正確な知識を持って警察と交渉する
  3. 県警本部・警視庁や警察庁の監察室等に苦情を申し立てる
  4. 検察官に対して告訴状を提出する

1 具体的かつ的確に犯罪事実を記載し・証拠資料を添付する

前述したように、警察官が被害届や告訴状の受理を拒む理由は、忙しいことや、犯罪の構成要件事実の捉え方や立証の仕方が難しく煩わしいことなどが挙げられます。

そうであれば、警察官が捜査をしやすいように、脅迫罪や恐喝罪の構成要件事実を把握し、加害者である犯人のどのような行為が、どのように犯罪構成要件事実に該当するのかを具体的かつ的確に記載することにより、受理の可能性を高めることができます。

また、警察庁も指摘しているように、警察官が被害届や告訴状の受理を拒む理由として、証拠や疎明資料が不十分であるという理由があります。

そのため、脅迫や恐喝の犯罪事実を立証できる証拠資料を添付したり、どこを捜査すればその証拠があると考えられるなどの情報を追記しておくことで、受理の可能性を高めることができます。

2 被害届・刑事告訴の正確な知識を持って警察と交渉する

前述のように、法律上は、被害届や刑事告訴は、原則として迅速に受理をしなければなりません。

このような被害届や刑事告訴についての正確な知識を持っていれば、警察官が言う受理をしない理由に根拠がないことを指摘することができます。

警察官

「この事件の管轄は〜署だから、そっちで告訴して。」

告訴人・弁護士

「犯罪捜査規範63条1項は管轄を問わず受理しなければならないと定めてますので、受理してください。」

警察官

「証拠が足りないから告訴状を受理できない。」

告訴人・弁護士

「証拠を集めるのは警察の仕事でしょう。警察庁の通達でも証拠や疎明資料の不十分を理由に受理を拒むべきではないと記載されてますよね。」

3 県警本部・警視庁や警察庁の監察室等に苦情を申し立てる

現場の警察官は、日々の業務に追われていることや、犯罪構成要件事実の記載が難しいことなどから、被害届や刑事告訴状の受理を嫌がる傾向にあります。

しかし、前述のように、警察庁としては、この不受理の問題について苦情が寄せられていることを懸念して通達を出しています。

そのため、担当警察官に対して、受理をしないのであれば、その事実と不受理の理由について、警察庁や警視庁・県警本部に苦情を申し立てますと告げることにより、プレッシャーをかけ、受理をしてもらうという方法があります。

それでも被害届や刑事告訴状が受理されないようであれば、実際に、警察庁や警視庁・県警本部に苦情を申し立てましょう。

警察官の不祥事については、監察室などがその監査をし、対応をします。

また、各都道府県の県警・警視庁では、苦情申し立ての窓口がありますので、こちらに対して、正当な理由なく、被害届・告訴状の受理を拒まれた旨を申し立てましょう。

リンク:警視庁の業務に対する苦情・ご要望・ご意見

4 検察官に対して告訴状を提出する

一般に、刑事告訴は警察官に対して行われることが多いですが、法律上、検察官に対して刑事告訴をすることもできます

第二百四十一条 告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。
② 検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。

刑事訴訟法

検察官は、司法試験に合格した法律の専門家ですので、犯罪構成要件を満たしていれば、告訴状を受理してもらえる可能性が高いです。

脅迫・恐喝と被害届・刑事告訴のまとめ

以上見てきたように、脅迫や恐喝の被害に悩む人は多いです。

日々、加害者からの脅迫・恐喝の恐怖に怯え、生命・身体・財産・名誉に対する加害行為がいつ加えられるのか不安に駆られております。

  • このような不安を解消し、安心できる日常を取り戻したい。
  • 脅迫・恐喝の加害者に適切な刑事処罰を与えたい。
  • 脅されて取られたお金を回収したい。慰謝料を請求したい。

などと思うことは想像に難くありません。

しかし、そんなときに、警察が被害届や刑事告訴状を受理して捜査を開始してくれないことがあるのが現実です。

本記事を読んで、被害にあわれた方が正しい知識をもっていただけたら嬉しいです。

また、犯罪事実の記載や証拠のピックアップなどについては、ご自身で全て対応するのも難しいことも多く、専門家である弁護士に作成や警察との交渉を依頼する方も多いです。

弁護士の依頼を検討している方は、まずは、気軽に無料相談のお問い合わせをしていただけたらと思います。

Bio

弁護士 若林

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。