YouTube動画の削除依頼をしたい!無断転載や権利侵害された際の対処方法

YouTube動画削除依頼の方法
弁護士 若林翔
2022年05月03日更新

YouTubeはいまや、テレビにも迫る存在感を放っています。生活への溶け込み方を物語るように、YouTubeに動画を投稿する人も増えました。

職業としてYouTubeに動画を投稿している人もいまでは珍しくなく、YouTubeで生計を立てる「YouTuber」という響きに馴染みが出てきた方も多いのではないでしょうか。

YouTubeに動画を投稿する人が増え、収入を得る手段としても確立されてきた昨今、問題になっているのが無断転載をはじめとした「権利侵害」です

放置していると、自分が努力してつくった動画によって見知らぬ人が収入を得たり、思わぬところで個人情報が流出してしまったりする可能性があります。他人の動画で自分の権利が侵害されているのを発見し、すぐに動画を削除してほしいと思うこともあるでしょう。

YouTubeで動画を削除してほしいと思ったときには、「削除依頼をする」という方法があります。権利を持っている方が正しい手順で削除依頼をすれば、他人がアップロードしている動画も削除してもらえるかもしれません。

そこで今回は、YouTubeで動画の削除依頼をする方法について、注意点も合わせて解説します。

弁護士に依頼をしてYouTube動画の削除依頼をしたい。削除の仮処分を起こしたいという方は、グラディアトル法律事務所までお問合せください

YouTube動画における無断転載や権利侵害とは

「無断転載」や「権利侵害」は削除依頼のきっかけになりやすい事案です。

具体的にどのような事例を指すのでしょうか。

無断転載とは、オリジナル動画と内容が完全に一致している動画が、何者かの手によって無断でアップロードされているという状況を指します。

また、権利侵害を受けている例としては、無断転載された動画によって著作権が侵害されている状況や、自分の顔が映り込んでいる動画によって肖像権やプライバシー権が侵害されている状況、商標登録されているロゴが使われている動画によって商標権が侵害されている状況といったものが考えられます。

権利侵害のなかでも個人がより直面しやすいのは、著作権やプライバシー権を侵害される事例でしょう。

YouTubeヘルプの「著作権とは」では、著作権の対象になる作品の種類として以下のようなものが挙げられています。

・音声と映像の作品(テレビ番組、映画、オンライン動画など)
・サウンド レコーディングおよび楽曲
・執筆された作品(講義集、記事、書籍、楽譜など)
・視覚的作品(絵画、ポスター、広告など)
・ビデオゲーム、コンピュータ ソフトウェア
・演劇作品(劇、ミュージカルなど)

(参照:著作権とは – YouTube ヘルプ

また文化庁のサイトには、保護の対象となる著作物に必要な条件として以下が挙げられています。

・思想又は感情を創作的に表現したものであること
・文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること

(参照:著作物について | 文化庁

これらをふまえると、多くの無断転載の動画も著作権を侵害しているといえるでしょう。

YouTubeチャンネルを管理するYouTubeStudio内に「著作権」という専用のメニューが設けられていることをみても、著作権の侵害は決して珍しい問題でないことがわかります。

またプライバシー権については、YouTubeヘルプの「YouTubeプライバシー ガイドライン」において、以下のように記載されています。

“コンテンツが削除の対象として考慮されるためには、そのコンテンツによって個人をはっきりと特定できる必要があります。さらに、その当事者もしくは法定代理人から提出された申し立てにおいて、顔写真、音声、フルネーム、政府発行の個人番号、銀行口座番号、連絡先情報(例: 自宅の住所、メールアドレス)、その他の個人を特定できる情報の組み合わせによって、個人を一意に特定している必要があります。YouTube は、コンテンツをプライバシー侵害によって削除すべきかを判断する際に、公共の利益、ニュース価値、同意の有無を考慮します。また、コンテンツ内の情報が他の場所でも公開されており一般的に入手可能であるかどうかも考慮します。YouTube は、プライバシー·ガイドラインの違反が発生したかどうかの最終決定を行う権利を有します。”

(引用:YouTubeプライバシーガイドライン

著作権侵害、プライバシー権侵害、いずれもYouTubeに動画をアップロードしていない方でも直面する可能性のある問題です。巻き込まれる可能性は決して低くない問題なので、直面した際の対処法を検討しておきましょう。

YouTube動画の削除依頼をする方法

YouTubeで無断転載や権利侵害に遭った場合の対処法として、原因を断つ「削除」は有効でしょう。

YouTubeでは、他人がアップロードした動画に対して「削除依頼」をすることができます。その方法には、「投稿者に直接依頼する」「YouTubeに依頼する」という2種類があります。また細かい依頼方法は、その削除依頼の理由によっても変わってくるでしょう。

削除依頼のくわしいやり方について、画像も交えながら紹介します。

投稿者に依頼する方法

削除してほしい動画の投稿者とコンタクトが取れそうな場合、まずは投稿者に直接削除依頼してみてもよいでしょう。

コンタクトの方法としては、動画やチャンネルの概要欄に記載されている連絡先に連絡するか、自分の動画の著作権を侵害していると判断された動画なら、YouTubeStudioの「著作権」から連絡をとることもできます(のちほど解説)。

送るメッセージには、削除してほしい旨とその理由を明確に記載しましょう。

そこからは個人同士のやりとりになるので注意が必要です。相手が無意識に権利を侵害してしまっている場合であれば望みがありますが、恣意的な無断転載や権利侵害の場合、削除してくれる可能性は低いでしょう。また、相手によってはかえって炎上してしまうリスクもあります。

可能性がないと感じた場合や、そもそも連絡がとれなかった場合は他の方法を選んでください。

YouTubeに依頼する方法

YouTubeでは運営側に動画の削除依頼ができます。その方法を削除依頼の理由ごとに解説します。

【著作権を侵害された場合】

無断転載をはじめとして著作権を侵害された場合、削除依頼の方法は2通りあります。いずれも「著作権侵害の申し立て」です。

1つ目は、YouTubeStudio内の「著作権」から削除依頼する方法です。

YouTubeStudio内の「著作権」という項目には、自分の動画の著作権を侵害していると判断された他人の動画が、動画名や視聴回数、掲載されているチャンネル、自分の動画との一致率といった情報とともに通知されます。

ここで通知された動画に対してのアクションには、「削除依頼する」に加えて、先述した「相手にメッセージをおくる」や「アーカイブする(放置する)」が選べます。

また著作権侵害の通知がきていない場合でも、「新しい削除リクエスト」から特定の動画に対して削除を依頼することができます。

削除依頼は、「著作権」の項目からアクション中の「!」アイコンを選択して情報を入力することによってできます。削除依頼する際に入力が必要な項目を解説していきます。

1.削除リクエストを受けている動画
自分のコンテンツがどの著作物に該当するのかを選択したうえで、著作権を侵害している動画のURLを入力し、「リストに追加」をクリックしましょう。

2.著作権者
著作権者(自分)の個人情報について入力します。「著作権者名」には本名を入力しなくても構いません。

3.削除オプション
著作権を侵害している動画を削除するタイミングや、著作権を侵害している動画に対しての今後の対処法を決めます。

4.法的合意事項
削除依頼をするにあたって、法的な事項に同意します。ここまで入力して「送信」をクリックすれば依頼完了です。

 

2つ目の削除依頼方法は、フォームから申請する方法です。

YouTubeは、著作権の侵害による削除依頼に備えてこちらのフォームを用意しています。内容は、YouTubeStudioから削除依頼する場合と同じです。細かい情報を入力して削除を依頼しましょう。

 

【プライバシーを侵害された場合】

先述のとおりプライバシーを侵害された場合にも、こちらから6つのステップを経ることで、「プライバシーの侵害の申し立て手続き」として削除依頼ができます。ステップの内容は以下のとおりです。

①確実に個人を特定できる内容が含まれていること、削除依頼したい理由が「プライバシー侵害」であることを改めて確認する。「続行」をクリックする。

②受けているのがハラスメント被害ではなくプライバシー侵害であることを改めて確認する。「プライバシー侵害の申し立てを行いたい」をクリックする。

③削除依頼したい動画のユーザーに連絡しなくてよいかを確認する。「次へ」をクリックする。

④削除したい理由が「コミュニティガイドラインへの違反」ではなく「プライバシーの侵害」であることを改めて確認する。「既にコミュニティガイドラインを確認した」をクリックする。

⑤プライバシー侵害の申し立てが虚偽だった場合、アカウントが停止される可能性があることを確認する。「次へ」をクリックする。

⑥開示される個人情報を確認し、「自分の画像または氏名」「その他の個人情報」の両方をそれぞれ入力する。

【権利侵害以外で削除を依頼したい場合】

著作権やプライバシー権を侵害されていないという場合も、「YouTubeのコミュニティガイドライン」に違反している動画は「報告」することができます。報告は匿名でできます。

報告された動画は精査され、コミュニティガイドラインに違反していると判断された動画は削除、未成年にのみ不適切だと判断された動画には年齢制限が設けられます。動画を報告する方法は以下のとおりです。

①動画の下にある「…」をクリックする

②表示されたメニューから「報告」をクリックする

 

③動画を報告した理由を選択して入力する。「上で選択した項目は、動画の説明内のリンクに該当している」にチェックをつけ、「次へ」をクリックする

 

④審査に役立つ具体的なタイムスタンプや詳細があれば入力する。「報告」をクリックする。

 

他にチャンネルやコメント、サムネイル、広告といった項目も、コミュニティガイドラインに違反していると思えば報告することができます。

 

YouTube動画の削除依頼をする場合の注意点

YouTubeの削除依頼は、やり方によっては削除依頼した側が不利益を被る場合があります。軽く考えていたことが、思いのほか大ごとに発展してしまう可能性もあります。

簡単だからと考えなしに依頼するのは危険です。注意すべき点も事前に押さえておきましょう。

削除依頼の動機をはっきりさせておく

YouTubeの動画を削除してもらうには、明確な理由がなくてはいけません。

特に権利侵害による削除依頼の場合は、YouTubeが用意している権利侵害の定義を確実に満たしている必要があります。削除依頼が客観的に見ても妥当なものかどうか、本当に権利侵害に該当するのかしっかりと確認したうえで削除を依頼しましょう。

削除依頼を何度も出さないようにする

削除してほしい気持ちが焦って、くり返し削除依頼をしたくなることもあるでしょう。

ただしその行為はかえって、削除依頼の正当性や信憑性を下げることにつながりかねません。YouTube側にスパムと判断されてしまえば、自分の方が悪質なアカウントだと判断される可能性もあります。

依頼の回数と削除依頼の採用率は比例しませんので、削除依頼は一度で十分です。

著作権者名には本名を入力しない

削除依頼によって削除された動画を開くと「この動画は〇〇の申し立てにより削除されました」と表示されるようになっています。この「〇〇」の部分には、削除依頼を出したユーザーがあらかじめ入力した著作権者名が表示されるしくみです。

著作権者名は削除依頼するときに入力する項目です。本名を入力した場合、動画を消されたユーザーとの間でトラブルが起こるきっかけになってしまうかもしれません。

著作権者名の部分は本名でなくてもいいとされています。削除後のことを考えると、本名を入力しない方が安全でしょう。

メールを受け取れるようにしておく

審査結果や依頼内容に不備があった場合をはじめ、削除依頼に関する情報はYouTubeからメールで送られてきます。スムーズに削除依頼を進めるため、あらかじめYouTubeからのメールは受信できる状態にしておきましょう。

YouTube動画の削除申請をしても必ず削除されるわけではない

YouTubeで他人の動画に対して削除依頼をすること自体は比較的簡単です。

一方、削除依頼が採用され、実際に動画が削除される確率は決して高くありません。手間をかけて依頼したものが、全くの無益に終わってしまう可能性もあります。申請した削除依頼が叶わなかった場合、YouTube運営を通じて対象の動画を削除してもらうことはできなくなってしまいます。

なんとしても動画を削除してもらいたいという場合は、弁護士に相談するという選択肢もあります。法のスペシャリストの力を借りれば、安心して戦うことができるでしょう。

どこに相談すればよいかわからないという方は、「グラディアトル法律事務所」に一度ご相談ください。24時間365日、経験豊富な弁護士が初回相談を無料でお引き受けしております。

削除や開示の仮処分、慰謝料請求や裁判は弁護士に依頼する

日々新たな動画が生まれ続けているYouTubeには、権利を侵害している動画も絶えません。

著作権やプライバシー権といった権利の侵害を被っている場合、投稿者やYouTubeに削除を依頼することができます。権利侵害に該当しない場合でも、コミュニティガイドラインに違反している動画の場合は、報告することによって対処してもらえる可能性があります。

ただし同時に、これらはあくまで「依頼」の域を出ません。削除してもらえる確率は決して高くなく、YouTubeに退けられてしまえばなす術がないでしょう。

権利侵害に対して慰謝料を請求したい、裁判を検討しているといった方は、弁護士に相談するのがよいでしょう。

 

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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