法人に恐喝罪は成立する?企業が狙われる恐喝の手口と対処法を解説

法人に恐喝罪は成立する?企業が狙われる恐喝の手口と対処法を解説

「取引先や従業員から恐喝されたが、企業に対しても恐喝罪は成立する?」

「企業が恐喝されたときの対処法を知りたい」

「企業に対する恐喝を防ぐための有効な対策とは?」

企業は常に、外部との取引や顧客対応、従業員の管理といったさまざまな利害関係の中に身を置いています。その中で、不当な金銭要求や脅迫まがいの言動にさらされる場面も少なくありません。取引先や元従業員、悪質なクレーマー、さらには反社会的勢力やサイバー攻撃者による恐喝など、業が標的になるケースも多様化しています。

しかし、こうした企業に対する行為が「恐喝罪」として刑事事件に発展するかどうかについては、個人と同様に考えることはできません。実は、法人が被害者の場合、刑法上の恐喝罪は成立しないのです。ただし、具体的な状況次第では恐喝罪以外の犯罪が成立するケースもありますので、企業の担当者としては、正確な知識を身につけておくことが大切です。

本記事では、

・企業が狙われる恐喝の典型的な手口
・恐喝を受けたときの企業対応の基本
・恐喝被害を未然に防ぐために企業ができる3つのこと

不当な要求に屈せず、企業としての信用を守るためにも、ぜひ最後までお読みください。

企業が狙われる恐喝の典型的なケース

企業が狙われる恐喝の典型的なケース

企業が対象となる恐喝行為には、さまざまな手口が存在します。以下に代表的なケースを紹介します。

取引先・元従業員からの恐喝

企業活動の中で特に多いのが、取引先や元従業員とのトラブルが発展し、不当な金銭要求がなされるケースです。たとえば「この内容を暴露されたくなければ金を払え」などと脅す行為は典型的な恐喝といえます。

退職後の従業員が社内情報を盾に金銭を要求するケースもあり、内部情報の漏洩リスクと合わせて注意が必要です。

クレーマーによる過剰要求

商品やサービスに関する苦情を理由に、法外な賠償や返金を求める「悪質クレーマー」も企業にとって脅威です。単なる苦情対応の範囲を逸脱し、怒号や執拗な連絡、SNSでの名誉毀損など、恐喝に該当しうる行為も見られます。

反社会的勢力による恐喝

反社会的勢力は、企業の弱みを握って金銭を要求するなど、古典的な恐喝行為を行うことがあります。「建設現場に嫌がらせをしてほしくなければ協力金を払え」といった形での関与や株主総会対策としての「企業舎弟」の関与などには注意が必要です。

反社会的勢力とのかかわりが世間に知られてしまうと、企業の信用は大きく失墜してしまいますので、安易に要求に応じてはいけません。

ランサムウェアによる恐喝

近年増加しているのが、サイバー攻撃による恐喝です。ランサムウェアにより企業の機密データを暗号化し、「復号したければ金を払え」と要求するケースがあります。被害は金銭的損失だけでなく、企業の信頼にも直結するため、事前のセキュリティ対策が欠かせません。

企業に対する恐喝罪は原則として成立しない

恐喝罪は、暴行または脅迫を用いて人を畏怖させて財物を交付させた場合に成立する犯罪ですが、ここでいう「人」とは自然人、すなわち個人を意味します。法人は、暴行・脅迫の客体になり得ないため、恐喝罪は成立しないというのが刑法の基本的な考え方です。

そのため、企業そのものに対して暴行や脅迫を用いて金銭を要求しても、それが恐喝罪として処罰されることはありません。

ただし、法人に対してなされた行為が、その背後にいる代表者や役員、従業員など「個人」に向けられたと評価できる場合は、恐喝罪が成立する余地があります。また、別の犯罪が成立する可能性もあるため、次章で詳しく解説します。

企業に対する恐喝で成立しうる犯罪

企業に対する恐喝で成立しうる犯罪

法人そのものに対して恐喝罪が成立しないとしても、行為態様によっては他の犯罪が成立する場合があります。以下では、企業に対する恐喝で成立し得る犯罪を説明します。

恐喝により企業の業務を妨害した場合|威力業務妨害罪

企業の正常な業務を威力をもって妨害する行為は「威力業務妨害罪」に該当します。

たとえば、飲食店の店内で大声で怒鳴り、「出て行ってほしければ金を払え」などと要求された場合、企業活動に直接的な威圧を与える可能性があるため、威力業務妨害での立件がなされることがあります。

なお、威力業務妨害罪の法定刑は、3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金と定められています。

※「拘禁刑(こうきんけい)」とは、従来の刑罰である懲役と禁錮を一本化した刑罰です。改正刑法に基づき、2025年6月1日から、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。

虚偽の情報を流すなどして業務を妨害した場合|偽計業務妨害罪

虚偽の情報を流して企業の業務を妨害する行為は、「偽計業務妨害罪」に該当します。

たとえば、「SNSで企業の悪評を流した。消してほしければ金を払え」など事実無根の情報を掲示板やSNSで拡散し、業務の信用や遂行に影響を及ぼした場合、偽計業務妨害罪での立件がなされることがあります。

なお、偽計業務妨害罪の法定刑は、3年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金と定められています。

企業の代表者や従業員に対する恐喝と評価できる場合|恐喝罪

恐喝の矛先が明確に個人(代表者、取締役、従業員など)に向けられ、「〇〇部長に実害を与えるぞ」「家族を巻き込むぞ」などの発言があった場合には、恐喝罪が成立します。

このように、法人に対する行為でも、個人に向けられた脅迫行為があれば、恐喝罪の要件を満たすため、恐喝罪に問える可能性があります。

そのため、相手の恐喝行為が誰に対して向けられているのかをしっかりと見極めることが重要です。

恐喝を受けたときの企業対応の基本

恐喝行為を受けた場合、企業としては冷静かつ適切な対応が求められます。以下では、恐喝を受けたときの企業対応の基本を説明します。

対応項目概要・ポイント
1. 事実関係の確認・共有いつ・誰が・何を要求されたかを整理し、録音・メモ・スクショ等で記録。法務や経営層と速やかに共有。
2. 証拠の保全メール・LINE・録音・議事録・監視映像などを確保。クラウド等にバックアップし、証拠の消失を防ぐ。
3. 要求を断る姿勢要求に即答せず、検討中と伝える。複数人で対応し、記録を残す。感情的にならず冷静に、毅然と対応。
4. 警察への相談証拠を持って警察に相談。違法性が明確であれば告訴・被害届も検討。被害拡大防止につながる。
5. 弁護士への相談交渉を一任し、法的評価や対応方針を確認。損害賠償・仮処分・刑事告訴などの法的措置で問題の収束を図る。

事実関係の確認と社内共有

恐喝行為が「いつ」「誰から」「どのような方法で」「何を要求され」「誰が対応したのか」など、事実関係を正確に把握することが重要です。事実関係の整理が曖昧なまま対応を進めてしまうと、社内外への説明に支障が出たり、誤った判断をしてしまうおそれがあります。

そのため、「恐喝かもしれない」と感じたときは、以下の点を意識して情報を収集しましょう。

・相手の氏名・肩書・連絡手段(電話、メール、SNS等)
・恐喝が行われた日時、場所、手段(対面、メール、電話など)
・要求された内容とその根拠の有無
・社内で最初に接触した人物、経緯の詳細
・相手方の言動の録取や記録(録音・議事メモ・スクリーンショットなど)

収集した情報は、法務部門、コンプライアンス部門、経営陣に速やかに報告し、関係者間で情報共有を行います。特定の担当者のみに任せるのではなく、組織として対応方針を統一し、発言・対応に一貫性を持たせることが重要です。

恐喝された証拠の保全

恐喝行為への法的対応を進めるためには、証拠の確保が極めて重要です。恐喝された事実を裏付ける客観的証拠がなければ、刑事告訴や損害賠償請求をしても認められないリスクが高まります。

恐喝に関する証拠として有効なものは以下のとおりです。

・恐喝メールやLINE、チャットアプリのスクリーンショット
・電話や面談の録音データ(可能であれば録音する)
・対応時の議事録や経緯メモ(日時・発言・対応者を記録)
・脅迫文や郵送物(開封せず警察や弁護士に相談)
・監視カメラ映像や第三者の証言

電子データは、意図せずに削除してしまう可能性がありますので、クラウドや外部ストレージへのバックアップも検討してください。

相手の不当な要求に応じず毅然とした対応をする

恐喝の本質は、「恐怖や圧力を利用して、相手に不当に金品や利益を差し出させようとする行為」です。一度でも要求に応じてしまうと、「この企業は脅せば金を払う」と見なされ、繰り返し要求されるおそれがあります。

そのため、たとえ要求内容に一見正当な主張が含まれていたとしても、それが脅しや威圧的な言動とセットになっている場合は毅然と拒否するべきです。

具体的には以下のような点に注意して対応する必要があります。

・要求内容への回答をその場で即答、約束しない
・社内で検討する旨を伝え、時間を確保する
・一人で対応しない(複数人で対応・記録を残す)
・感情的にならず冷静かつ理性的に応対する

恐喝に屈しない姿勢は、社内外へのリスク管理姿勢としても非常に重要です。

警察や弁護士への相談

明らかに違法な要求を自社での対応が難しいと判断された場合は、速やかに専門機関に相談することが不可欠です。

【警察に相談する場合】

恐喝罪や威力業務妨害罪など刑事事件として対応すべき事案の場合には、証拠をもって警察に相談し、告訴・被害届の提出を検討します。警察が介入することで、相手方の行動を抑止し、被害拡大を防ぐ効果も期待できます。

ただし、警察は民事的なトラブルには介入しないため、恐喝と評価される明確な言動や証拠が必要です。相談時には、経緯や証拠資料を時系列で整理して持参しましょう。

【弁護士に相談する場合】

企業法務に詳しい弁護士に相談することで、恐喝かどうかの法的評価を受けられるだけでなく、相手方との交渉窓口をすべて弁護士に一任することが可能です。これにより、企業の担当者が直接関与せずに済み、心理的負担や対応ミスのリスクを軽減できます。

また、弁護士を通じて法的措置(損害賠償請求、仮処分、刑事告訴など)を検討することで、問題の早期収束や再発防止につながります。特に、社外への情報拡散などによる風評被害が懸念される場合には、弁護士による早期対応が重要です。

グラディアトル法律事務所では、恐喝被害にあった企業からご依頼を受けて、弁護士が恐喝相手と交渉をして、話し合いをまとめたり、毅然とした態度で恐喝のブロックに成功した事例が複数あります。

恐喝被害を未然に防ぐために企業ができる3つのこと

恐喝被害を未然に防ぐために企業ができる3つのこと

恐喝行為への対応は、発生してからの対処だけでなく、事前の予防策が極めて重要です。企業としての信頼を守り、従業員の安全や業務の安定性を確保するためにも、日常的にリスクを抑える仕組みを構築しておく必要があります。以下では、企業が取り組むべき3つの基本的な防止策を紹介します。

コンプライアンス研修と内部通報制度の整備

恐喝のきっかけは、内部関係者の不正行為やハラスメントなど、企業内部の問題が外部に漏れることから始まるケースも少なくありません。従業員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めるためにも、定期的なコンプライアンス研修を実施しましょう。

また、従業員が不正や問題行動を匿名で報告できる内部通報制度の整備・運用も、早期の火種発見に有効です。

クレーム・トラブル対応マニュアルの策定

悪質なクレーマーによる恐喝的要求を防ぐためには、従業員が適切に対応できる仕組みの整備が不可欠です。

たとえば「正当な苦情」と「恐喝まがいの要求」の違いを理解させるとともに、対応フローや報告体制を明記したマニュアルを社内で共有・訓練しておくことで、個人任せの対応を防ぐことができます。

また、現場対応に迷いが生じた際も、社内の統一的な方針に基づいて判断ができるようになりますので、対応マニュアルの作成がまだできていないという企業は、早めに対応していきましょう。

反社会的勢力排除に関する基本方針の徹底

反社会的勢力との関係遮断は、企業にとって法的・社会的責任を果たす上で不可欠です。反社チェックを導入した取引先調査や契約書への暴排条項の明記、役員・従業員への定期研修などを通じて、反社会的勢力と関わらない方針を徹底しましょう。

警察や顧問弁護士などとも連携し、万が一の関与が疑われる事案にも迅速に対応できる体制を整備しておくことが望まれます。

企業への恐喝の対処・予防はグラディアトル法律事務所にお任せください

企業への恐喝の対処・予防はグラディアトル法律事務所にお任せください

企業が恐喝や不当要求にさらされた場合、対応を誤ると金銭的損失だけでなく、企業の社会的信用や内部統制にも深刻なダメージを与えかねません。また、対応を迷っている間に要求がエスカレートしたり、社外に情報が漏れてしまえば、被害の収束が困難になるケースもあります。そのため、恐喝行為に直面した際は、初動の段階で法的に正しい判断を下すことが極めて重要です。

グラディアトル法律事務所では、企業法務・危機管理に精通した弁護士が恐喝の内容や状況に応じて最適な対応策を迅速にご提案いたします。証拠の保全方法や社内対応の助言、相手方との交渉代行、警察や関係機関との連携、さらには損害賠償請求や刑事告訴の支援までワンストップで対応が可能です。

また、再発防止に向けた社内規程の見直しやコンプライアンス研修の実施、契約書のリーガルチェック、反社チェック体制の構築など予防のための総合支援も行っております。

恐喝リスクへの不安を感じている企業担当者の方は、ぜひお気軽に当事務所にご相談ください。

まとめ

法人に対しては原則として恐喝罪は成立しないものの、代表者や従業員に対する行為であれば恐喝罪として扱われる場合もあります。また、威力業務妨害や偽計業務妨害など、別の犯罪が成立するケースもあります。

企業としては、不当な要求には毅然とした対応を取り、証拠を確保した上で、弁護士や警察に相談することが大切です。さらに、社内の危機管理体制や教育制度を充実させることで、恐喝被害を未然に防ぐことも可能です。

恐喝のリスクに備え、企業としての強い体制を築くためにも、まずはグラディアトル法律事務所までご相談ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。